ローマ帝国衰亡史

 

 日に七度温度計の寒さかな

中野好夫の名を知ったのは、
大学一年生の時だったと思います。
新入生向けのパンフレットみたいなもので、
目にしたのだったかも知れません。
詳しいことは忘れてしまいました。
とにかく、
工業経済学が専門の先生から、
中野好夫の『蘆花徳冨健次郎』を薦められました。
筑摩書房から三巻もので出ており、
大佛次郎賞を受賞した作品です。
夢中で読んで、
面白いなあと思いました。
それまで中野好夫がどんな人か知りませんでした。
作品で取り上げている徳冨蘆花も面白いけど、
取り上げ方、
中野さんの人間を見る見方が面白いと思いました。
以来、
中野さんがわたしにとりまして、
一番かも知れません。
お嬢さんが書いた
『父 中野好夫のこと』には泣かされました。
中野さんが晩年に訳されたのが、
ギボンの『ローマ帝国衰亡史』です。
四巻までが中野さんの訳。
その後、
中野さんの遺志を継ぎ朱牟田夏雄さんが五巻と六巻。
朱牟田さんが亡くなった後、
中野さんのご長男である好之さんが、
七巻から最終十一巻までを訳されました。
最初の巻が出たのが一九七六年、
最終巻の発行が一九九三年ですから、
足掛け十八年ということになります。
三人の訳業もすばらしいですが、
版元の筑摩書房もエラい!
わたしは、
西ローマ帝国の滅亡を扱った第六巻までは読んでいましたが、
好之さんが訳された七巻以降は未読でしたので、
今読まなければ、
もう読まない気もしますから、
朝ぽつぽつと、
ユスティニアヌスの行状などに付き合っています。

 朝浸かり夕にまた入る湯や楽し