バッグが無い!

 

 基督の我を立たしむ冬となり

夢を見ました。
仕事の打ち合わせにでも行くのか、
専務イシバシ、武家屋敷と三人で出かけました。
バス停で待っていると、程なくマイクロバスがやって来ました。
このごろはバスに乗る人が減ったのか、
路線バスもマイクロバスが多くなりました。
蛇腹式のドアが開いて、順に乗り込みました。
席は全部塞がっています。
わたしは吊り革に捕まりました。
イシバシは、一人がけの椅子の背に捕まっています。
武家屋敷は背伸びして吊り革に。
二人を相手に、わたしは今日の流れについて
もう一度念押しするようです。
少々テンションが上がってきました。
仕事を決めなければなりません。
外の景色を見、気分は上々、うきうき、うっきーきー。
その時でした。
あれ!?
バッグが見当たりません。無い! 無い!
棚の上にも足元にも、どこを探してもありません。
だんだん焦ってきました。
すべての棚の上、乗客たちの足元、つぶさに眺めましたが、
ありません。出てきません。
イシバシも武家屋敷も探してくれましたが、やっぱり出てきません。
バスは発車してからまだ一度も停留所に停まっていませんから、
だれかがバッグを持って降りたということは考えられません。
客たちと目が合いました。よく見ると、若い者は一人もなく、
老人ばかりです。
皺のせいで見分けが付きませんが、わたしを、
皆わらっているようにも見えます。
最後部座席に座っている男が、
「こんなようなバッグですか?」と、声を掛けてきました。
「ええ、まぁ…」と、こころここにあらずの返事をしましたが、
わたしのバッグとは似ても似つきません。
乗り合わせたこの老人たちの悪意の総体が
わたしのバッグを隠してしまったのだと確信しました。
能天気にウキウキしたことが彼らの恨みを買ってしまったのだ。
バスを降りたらすぐに電話して、カードを止めなければなりません。
一日が急に暗雲垂れ込めたものに変貌していくようでした。

 タコホタテ海の底よりおでんかな

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