五年ぶり

 階段を上りきり闇の蟋蟀
 大学時代の友人と再会し旧交をあたためた。話しぶりがまったく変わらず、愉快になる。歳のことは、お互いにあまり触れない。しても仕方のないこと。
 大学1年生の時、わたしは仙台市の八木山というところに住んでいた。途中、八木山橋があり、深い渓谷になっていて、自殺者が後を絶たなかった。
 先日、社員旅行で仙台・松島に行った折に、久しぶりに訪れて見たが、有刺鉄線ではなく下から上まで真っ直ぐに伸びた四角い鉄材に変わっていた。最上部は〔  〕のように内側に折れ曲がっている。人が上れないようにとの苦肉の策なのだろう。
 三十年前、友人は、あの八木山橋を通って、自転車でわたしのアパートまでやってきたのだった。あの渓谷の誘いを振り切りペダルを漕いで来た。秋刀魚を焼いて二人で食べた。

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