晴れ時々マイルス

 マイルス・デイビスのCDで一番のお気に入りはと訊かれたら何と答えるだろうか。オーソドックスに『カインド・オブ・ブルー』? 村上春樹も好きだという『フォー&モア』? 地底を揺るがした、なんていうキャッチコピーも確かあったはずの『ビッチェズ・ブリュー』? 日本の聴衆のド肝を抜いた『パンゲア』? それとも、ちょっと逸れて『イン・ア・サイレント・ウェイ』? 『オン・ザ・コーナー』あたりだろうか。
 わたしの場合は、だれが何と言おうと『ダーク・メイガス』。マイルス・デイビスの何たるかも知らずにジャケ買いしたレコードを今はCDで聴いているのだが、最初はホントに、ナンダコリャ〜!!だった。その後、マイルスという人はカッコいい音楽をやっている人だと思うようになって、そうしたら、中でも一番なのが『ダーク・メイガス』ということになったのだから好みというのは分からない。こっちが元気なときに限るが、むちゃくちゃ聴きたくなるときがある。思い出や明日の高望みや酒に溺れたことなどひとまず横に置いといて、ただただ禍禍しい音の洪水に浸りたくなる。貘さんみたいに空でもひっかぶって不貞寝したくなる。

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