もう少しで本を

 部屋にある本を全部処分したらどんなに気持ちいいだろうと思うことがある。でも実際にはなかなか難しい。本というのは印刷された紙を束ねただけのものではないから。
 ここ2年ほど必要にかられて読む本はあっても読書をたのしむということから遠ざかっていた。同時に、音楽を聞くことからも人と会うことからも。要するに、たのしめなくなっていたのだ。
 何が功を奏したのか分からないけれど、近頃、腹の中でにんまりする瞬間があって、ん、この感じこの感じ、と久々の上昇気運を味わっている。この感じがもう少し延長してくれると、本も読めるし、音楽も聞ける。人に笑って会うことだってできる。ひょっとしたら、これが百日練功の成果なのかもしれない。もう少し、もう少し。本を処分しなくて良かった。会社の人に本をあげることもできなくなるところだった。

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