網戸

 一昨年あたりから網戸の破れがひどくなり、気になっていた。最初の破れ目に気がついたとき、ベランダをよく通る猫が引っ掻いたのかと思ったが、それにしては、縦に相当の長さがあったから、猫の仕業ではなかった。そのうちにあっちが破れ、こっちが破れして、網戸の役目を果たさぬばかりか、見た目にも汚らしい感じがし、これではいかんと思い立ち、近くにある金物屋に行って網戸の張り替えを依頼した。去年の冬のこと。すると、ご主人曰く、頼まれれば仕事としてやるけれども、網戸の網は日差しに弱いから、いま取り替えるよりも、五月ぐらいにしたほうがよくはないかと。そうこうしているうちに五月が過ぎ、六月も終わろうとしている。
 土曜日の朝、テレビを点けたら、ちょうど「網戸の張り替え」をやっていた。業者に頼まなくても自分で簡単に出来るという。森三中が出ていた。見ていると、確かにそんなに難しそうでもなく、1枚20分もあれば出来るとテレビは言った。それに森三中だ。彼女たちに出来てわたしに出来ないはずはないという気にだんだんなってきて、ついに、張り替えの材料を仕入れに保土ヶ谷駅近くのスーパーへ出かけることに。
 テレビの指示通り、網とカッターとローラーを買うところまではよかったが、網を固定するゴムの幅に種類があるとは知らなかった。せっかく山を下りたのに、また山を上り、わが家の網戸を縁取るゴムの幅を計ってみると5.5ミリ。また山を下り、5.5ミリのゴムを買い、また山を上る。これだけで相当へたばった。
 さて、いよいよ作業を開始。実際にやってみると、テレビが言うほど簡単ではない。最初の1枚は完璧に失敗。張った網を最後にカッターで切らなければならないのだが、手許が狂って、張った網のほうまで切ってしまった。ああイラつく! でも、仕方がない。また一からやり直し。テレビでは1枚20分ほどで、なんて言っていたが、やり慣れた人ならともかく、初めての人がそんな短時間で出来るわけがない。あの番組にしても、思い出してみれば、森三中が指導者の指示にしたがってやり始めた場面と仕上がったところしか映していなかったではないか。チックショー!だ。実際は倍以上の時間がかかってしまった。しかも、2枚出来たところで集中力が切れ、残りの1枚はまた今度ということにするしかなかった。そもそも最初の失敗により、網が不足していた。もう一度山を下りる気力なし。
 張り替えのコツについてもテレビで教えていたが、確かにそれはその通りに違いないのだが、ほかにもいくつかコツがあり、見るとやるとじゃずいぶん違うことを改めて思い知った。