はんなり

 桜木町駅で電車を降りようと席を立ったとき、きれいな白髪の女性が立ちあがりざまにハンカチを落とした。女性は気付かず、いま開こうとするドアの前に進んだ。わたしはハンカチを拾って女性に近づき二の腕に少し触れ、「落としたようですよ」と言った。女性ははっきりと「どうもありがとうございます」と言い、照れくさそうに微笑んだ。ドアが開き、わたしのほうが先に電車を降りた。拉致問題でテレビでよく拝見する上品な女性にも似て、わたしはすっかりいい気分になった。関西地区で「はんなり」というのは、こうした場合の形容句でもあるかと思ったりしながら、いつもなら下りエスカレーターに乗るところ、そうはせずに階段を勢いよく下りたのだ。