久しぶり

 午後、大倉山の植木マッサージへ。四月末に鎖骨を折って以来、固定ベルトやらリハビリやらで左肩を庇いながら過ごしてきたこともあり、肩や首がばんばんに凝って、若頭ナイトウに頼んで揉んでもらったりもした(若頭、力が強く痛いが上手い! やってもらうと短時間で楽になる)が、毎日頼むのも気がひけ、約半年ぶりに足を運び、全身をたっぷりマッサージしてもらう。終わったら背筋が3ミリ伸びた気がしたぐらい。ほんとほんと。「久しぶりだったので、2、3日だるいかもしれませんよ」の言葉どおり、きょうは今朝からぬーぼーとしている。

横浜秋田

 小・中学校の同級生N君、Mさん、それと大船で働いているMの娘さんと横浜で会食。
 休日のことでもあり横浜7時の待ち合わせにはたっぷり時間があったから、よし、ここはひとつ横浜まで歩いてみようと思い立ち、愛用の万歩計をズボンの左ポケットに差し、てくてくウォーキングとしゃれてみた。JR保土ヶ谷駅の西口から相鉄線の天王町駅方面へ向かい、さらにひたすら歩くと、小社の前の事務所があった浅間町に至る。家を出てからそこまでが45分。そろそろぽつぽつと上から落ちてくるものがあったが、傘を差すほどのことはなく、見なれた町並みを仰ぎながら横浜駅へ。
 約束の時刻までにはまだ間があったので本屋を冷やかし新書2冊と文庫本1冊購入、下へ下りたらすでに二人は待っていた。東急ハンズ斜め向かいのアジアン・ファイルへ。幼なじみとあって、話題も言葉も秋田秋田秋田。1時間ほど遅れてMの娘さん合流。話題が尽きず、気がつけば12時をすでに回っていた。Mさんは1週間ほど娘のところにいるそうで、秋田に帰る前にもう一度4人で会おうと言って別れた。気が置けない友人との会話はいつも楽しい。

ちょっとしたこと

 昨日、社の若い女性たちが本棚を片付けていた。本棚といっても最初から本棚として作られたものではないので、本を置くにはもともと適していない。
 読まない本をただ整理して重ねて置くだけならそんなに工夫は要らないが、師匠の安原顯さんからいただいたものを始め、装丁や本文組の参考にもと置いてあるものだから、なるべくどこに何があるか分かるようにしておきたい。
 事の発端は、高村薫の『レディ・ジョーカー』を見つけることにあったが、そして、それは間もなく積まれた本の後ろから見つかったのだが、本が機能的に積まれていないと考えた愛ちゃんは、リーダーシップを発揮し、みんなで知恵を出し合いながら工夫を凝らして試行錯誤の上、見やすく美しく重ねていった。
 ほんのちょっとしたことだが、見ていて清清しく、いいなぁと思った。自発的であろうとすればなんだって自発的だし、自発の芽はいつか必ず出るものだ。

仕事の縁

 秋田の有力紙『秋田魁新報』の取材を受け、首都圏で働く人を紹介する「秋田人」というコーナーに取り上げられたことがきっかけで、記事を読んだ大学の先生から本を出したいとの連絡が会社にあったという。ちょうど出掛けていた時で、営業の奥山が電話を取った。どこで縁が結ばれるか分からない。来月原稿を持って来社する予定。ありがたい話だ。
 午後、『刺青墨譜』に収録する写真を撮らせてもらったNさんが妹さんと一緒に来社。本の出来具合をとても喜んでいただき、仕事場近くの掲示板に本のポスターを貼ってくださるというので、数枚出力して差し上げた。ありがたい。
 ありがたいありがたいで仕事をするのが一番。きのうは一日ありがたいに満たされていた。夕刻、椅子を回転させたら空が夕陽で真っ赤に染まっていたから「すげーすげー、みんな見てみろよ!」と叫びベランダに飛び出した。富士山の右肩にかかった夕陽が刻一刻と滑り始め、とちょうどそのとき、鴉が2羽、西の空を渡って行った。社員一同、ベランダに並んで「ほう」と溜め息。こうやって仕事が終わるのもありがたい。

写真展会場

 紀伊国屋新宿南口店の写真集コーナーに、写真集『北上川』のポスターを貼らせてもらえることになり、橋本さんも交え担当者と打ち合わせ。型通りの話し合いでなく親身にいろいろ相談に乗ってくれ、気持ちのいい打ち合わせができた。ビジネス上の短い会話でもこころの通い合いというのはあるものだ。
 東京駅丸の内口丸善3階へ。来月、その一角を借り、「だ」と「の」の違いが売り(!)の『ただしいジャズ入門』と『たのしいジャズ入門』をずら〜っと展示することになっており、その下見に。『ただしい』は学習院大学の中条省平氏。『たのしい』はジャズ喫茶メグの店主にしてジャズ評論家の寺島靖国氏。丸善3階の目指すコーナーには現在東山魁夷の画集が飾られている。ここにウチの本が並ぶのか。ん〜、愉快愉快!!
 次。今月25日から銀座泰明小学校近くのギャラリー悠玄にて「橋本照嵩 北上川写真展」が開催されることになっている。そのための下見に。素敵なお洒落なスペースに一同感嘆の声。マネージャーとの事前の打ち合わせにも力が入る。橋本さんといえば「リヤカーの旅」というぐらいだから、リヤカーを会場に持ち込んでみてはの提案もあったそうだが、予算の関係で断念。地方の個展ではリヤカー持ち込みに消極的なのに、逆に東京のど真ん中、銀座の画廊のほうが積極的なことに橋本さん感慨深げ。
 忙しかった一日の最後は、石巻ゆかりの寿司屋で一献。銀座で寿司かよと思ったが、リーズナブルかつ美味! 写真集にも出てくる墨廼江(すみのえ)酒造の、その名も「墨廼江」を飲む。旨い! 橋本さんが地元石巻の酒や料理を誇らしげに語る姿が微笑ましい。写真展、ぜひ成功させたい。

CDを洗う?

 昨日、一体型のオーディオのピックアップが故障したのをそれと知らずに、CDの真ん中の穴が小さいせいかと思って包丁で穴をグリグリ広げた話をここに書いた。それは作り話でもなんでもなく全くの事実で、その犠牲になったCDには、ジャズの大御所、かのマイルス・デイビスのものもあった。さらに我が間抜けぶりをご披露すると、穴を広げても音が出ず、なんだかスルスルッ、スルスルッ、スルスルッと、いかにも滑るような音がする。滑りを食い止めねばってんで、ピックアップとCDを両面テープでくっ付けた(!)こともある(意味ね〜し!)。馬鹿だ!
 そのオーディオというのが、ソニーが海外向けに開発したものだそうで、どこにもSONYの文字はなかったけれど、それをくれた知人にそう教わっていたから、心をこめたていねいな手紙をソニーの技術部宛てに書いて修理を頼んだ。そうしたら、ピックアップの部品を交換しただけで、ちゃんと元通り音が出るように直してくれた。さすが世界のソニー! と喜んだ。
 ことの顛末を記すと以上のようなことなのだが、それはともかく、上には上がいるもので、昨日の「よもやま」を読んだ知人からメールがあり、おいらの行為に仰天したかと思いきや、そうではなく、極めて淡々と「わたしはCDを洗いました…洗剤をつけて」とあったので、笑ってしまった。CDを洗うなんて聞いたことがない。しかもご丁寧に洗剤まで付けてとは…。さすがB型、似た者同士。発想に共通したところがある。ほかの血液型の人はこういうことはしないのではなかろうか。

設定は大事

 ウォーキングが趣味になって、出歩くことがあまり苦でならなくなった。専務イシバシや武家屋敷をつかまえては「万歩計買いなよ。歩数だけでなく、歩いた距離、消費カロリー、時計まで付いてんだぜ」と薦めている。
 さっそくイシバシがとても立派なのを買ってきた。おいらのが2千円ちょいぐらいなのに、4千円以上するやつを。見るからに高そう。身に着けなくても、ハンドバッグの中に入れて歩いてもいいそうだ。便利。なのにイシバシ浮かぬ顔をしている。訊けば、高価なだけに、歩数、歩行距離、消費カロリーどころか、体内脂肪がどうだとかコレステロールがどうだとかBMI値がどうだとか、やたらと設定が面倒らしい。分かる分かる。よ〜っく分かる。便利な機械というのはそれが面倒臭いのよ。簡単ケータイ電話が売れる所以がここにある。
 実はわたしの万歩計も、ついこの間まで設定が違っていた。というか、買ったまま、ただ電池を入れて腰につけ、ときどき開けてみて、なんだまだ千歩かよ、なんてやっていた(猿みたい)のだが、感覚的にどうも歩行距離が短いような気がしてならない。人間らしく取扱説明書をていねいに見てみたら、初期設定が一歩50センチと書いてある。男の一歩が50センチであるわけがない。「使う前に設定してください」とちゃんと書いてあるではないか。読まずに使ったわたしが馬鹿だった。
 設定し直して我が家から会社まで歩いたら、3.3キロあった。納得。感覚的にだいたいそれぐらいだろうとの予測とぴたり一致。ことほど左様に、わたしは機械音痴、原始的感覚人間なんである。
 いま会社で使っている一体型のオーディオのピックアップが故障したのをそれと知らずに、CDの真ん中の穴が小さいせいかと思って包丁で穴をグリグリ広げ、若頭ナイトウに呆れられたことが懐かしい。「CDの穴を包丁で広げた人をわたしは初めて見ました。というか、穴を広げたら音が出るのではという発想自体がとても珍しいと思います」と、違う生き物を見るような目でおいらを見ていたっけ。