いただきます

 自分でつくって食べるのでも、店に入って食べるのでも、だれが作ったかにかかわらず、いただきますと、手を合わせる。食べ終えたら、ごちそうさま。
 先日、武家屋敷といっしょに野毛坂を下りて、たまに行く中華飯店に入って食べたときのこと。大きな丸テーブルが二つあり、そのうちの一つに向かい腰掛けた。C定食とD定食を注文。相席はいつものこと。
 わたしの隣に三十代くらいのOLが座り、すぐに持参した雑誌を開いて読み始め、店員がきても眼を上げずにチャーハンか何かを注文した。わたしたちのものが先にきたので、「いただきます」と手を合わせた。すると、雑誌に集中していたはずのOLが、文字通り、じろりと横目でわたしを睨んだ。恐ろしいぐらいの目つきで。一瞬ひるんだが、悪いことをしたわけではないので、わたしは静かに箸を運んだ。途中、OLはと見ると、自分が注文した皿には目もくれず、ひたすら雑誌の頁を繰りながら箸を動かしていた。わたしはいつもこうして食事をしているのよ、と彼女のオーラが語っていた。

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ぶけご炸裂!

 わが武家屋敷ノブコは武家屋敷らしく、草かんむりを草がんむりという。武家屋敷ノブコが発する武家っぽい用語を武家語とよぶ。このごろあまり武家語が聴かれなくなったなあと淋しい思いをしていたら、ついこのあいだ、相当な武家語を耳にし、さすが武家屋敷と感動を新たにした。
 ぢデジ。
 あはははは…。ぢデジ。
 昼食が終わって帰りの坂道の途中、武家屋敷は三度、ぢデジと言った。住まいのアンテナのことを話題にしていたのだが、そんなことより何より、ぢデジ。地上デジタル放送を略してぢデジ。地面を「ちめん」とは言わないことから、地デジがぢデジ。あはははは…。ちデジと発音するよりも、なんだが電波が地を這うようにくる感じがして、地上デジタル放送の意図するところとむしろ合っているかもしれない。あはははは…。

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密処

 秘密の密に、ところ。何やら怪しい。ところが、気功においては重要なポイントで三点一線における一点なのだ。残り二点は、肩幅ぐらいに開いた足のかかとを結んだ線の中央、それと天頂(あたまのてっぺん)。
 密処をリラックスさせることはとても大事で、ここがリラックスしてないと逆効果にもなるというから注目しないわけにはいかない。が、この場所がなかなかはっきりとつかめない。
 肛門と性器の中間、日本で言うところの、いわゆる蟻の門渡りに当たるようだが、そこをリラックスさせるとはどういうことか。お灸では、ツボに印をつけ自分でもできるようにするけれど、あの伝で先生にマジックで描いてもらおうか。でも「密処に印をつけてください」と先生にお尻を向けたら、先生、驚くだろうなあ。

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ねむ

 午後の仕事を始めたとたん、無性に眠くなり、机に向かったまま、しばらく頬杖をついて居眠りをした。昼、カレーを食べたせいだろうか。オクラ豆腐カレーにイカ唐揚げトッピング。いつも食べているメニューだし、そんなことはないはずだが…。そうすると、詰め物をした奥歯の横の歯茎が腫れて歯科医に飛びこみ処方してもらった化膿止めのクスリが効いて、ということだろうか。それとも、ただの春眠暁を覚えずにすぎないのか。

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辞書のこと

 変な話だが、子供の頃、初めて国語辞書を買ってもらったとき、それが例えば小説みたいに、人の手によって書かれたものだとは到底思えなかった。ところが、年を経るにしたがって、辞書も、小説以上とは言わないけれど、小説ほどに創作されていることを知り、苦労の人肌を感じて面白いものだと思うようになった。いま、『ウェブスター辞書と明治の知識人たち』(仮題)を読んでいる。

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人気のヒミツ

 「天才たけしの誰でもピカソ!」が十周年とかで、北野武を取り上げ3時間のスペシャル番組をやっていた。
 軍団はもちろん、いまテレビを賑わしているお笑いの面々が勢ぞろい、たけしのテレビ界における位置をまざまざと見せつけられた。スタジオに登場しない人々へのインタビューも面白く、あっという間の3時間。たけしが映画について、「自分の映画で初めはセリフのないちょい役で出ていても、一所懸命やっているやつは次の映画でセリフ付きの役を振るとかね。適当にやっているやつはもうそれっきり。一所懸命やってれば誰かが見ているもので」と語っていたが、人気のヒミツを垣間見た気がした。今週も続きがあるそうだから見てみよう。カメラマンの橋本さんは、浅草時代のたけしの写真も撮っていたはず。

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難易度C

 ゆるやかな動きながら、体操競技でいうならば難易度Cだろう。
 きのう木曜日は気功教室の日で、専務イシバシ、武家屋敷ノブコと三人で出かけた。捻動(にゅうどう)という動きを新しく教えてもらったが、これがなかなか難しい。ラジオ体操の「からだをねじる運動」に似ているけれど、腰の動きが全く逆。「からだをねじる運動」では、上半身の回転に合わせて腰も同方向に動く。捻動では、腰というか骨盤を常に安定させていなければいけない。腰を安定させ上半身だけを捻っていくから、ちょうど雑巾を絞るような形に腰が捻られる。シンプルな動きなのに、日本では習ったことのない動きだから、先生に合わせて動こうとしても、体がついていかない(膝と臍のあたりをゆるめ、少し前かがみになる気持ちでやるのがコツ)。新しい動きの体得は、難しい。自転車に乗れなかった子供がある日突然自転車に乗れるようになって歓喜するようなものかもしれない。

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