気分爽快!

 眼を覚ます原稿読みたし春の風
 WBC、侍ジャパンがやってくれました。
 ちょうど銀行さんが二人いらっしゃっていたのですが、もうそれどころではありません!(銀行さん、ごめんなさい)
 あの場面でのイチローのセンター前ヒットは、往年の長嶋茂雄を髣髴とさせるものがありました。
 ヒーローというのは、記録だけではないのですね。みんなの願いを託された人間が、ここぞという時に、その役割を十全に果たす、それでなければ時代のヒーローにはなれません。
 イチローは、きのうで歴史に残るヒーローになったのではないでしょうか。
試合後のインタビューで、「ぼくは(なにか)持っていますね」と興奮しながらコメントしていましたが、自分で自分に驚いていたのかもしれません。
 インタビューといえば、原辰徳監督の「うまい監督さんならもう少したくさん点を取れたでしょう。それでも辛抱しながらやった。とにかく我々の目的は勝つということで、声援をいただきました。プレッシャーにつぶされそうになったけれども、全員ではねのけて喜びを分かち合えるということは、日本のためにも良かったと思います」には泣けた。
 WBC監督就任にあたってもいろいろあったけれど、なんとか自分の役割を果たしたという安堵と喜びに満ちていました。
「うまい監督さんならもう少したくさん点を取れたでしょう」言えないよねえ、なかなか。
 春風を紫に染め毒を吐く

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週の始まり

 一行の終り果てなし春の午後
 あす地球が最後の日を迎えるとしても、あわてず騒がず、粛々と一本の苗木を植えるような、そういう日々をおくりたいと願いながら、現実は、そとの刺激に翻弄され、雑念と感動にゆれる笹舟のような時間が過ぎていきます。
 WBC、きのうは準決勝。日本・アメリカ戦。会社のテレビで観戦しましたが、涙をこらえるのに必死でした。松坂をはじめとして、二十歳そこそこの青年がきらきら目を輝かせプレーしている姿を見ていると、ああ、もう勝負なんてどうでもいい(でもやっぱり勝ってほしい)、この若者たちを見られただけで満足!(でもやっぱり勝ってほしい)という気持ちがこみ上げてきたからです。
 一年は52週あるといっても、こんな週の始まりは、そうそうあるものではありません。
 今日は決勝。因縁の対決、韓国戦。目が離せません。
 仕事疲れを作の疲れで消す弥生

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大山倍達

 今朝からは春だ小糠の雨降りだ!
 極真会館の創立者にして、幾多の伝説を生んだ空手家大山倍達先生の夢を見た。
 巨大な建物に入ると、各部屋を仕切っている襖は開け放たれており、畳が延々果てなく続いているように見えた。ネクタイ姿のサラリーマンが大勢いて、部屋ごとに決められた稽古をこなし、この部屋の稽古を終えればあの部屋へと、つぎつぎ移動していった。わき目をふるものなどいない。
 呆気にとられていたわたしは、ふと、部屋の片隅に置かれていたノートに気がついた。木の丸椅子の上にのっていた。
 見ると、大山先生直筆のメモで、なにやら極真の極意を記しているようであった。瞬間に会得した真理を、瞬時を惜しむように書き留めた文字に圧倒された。文字からモワモワと炎と気迫のクハーッ!の声が立ちのぼってくるようだった。でも、これを編集してまとめるのはかなり大変な作業であるなと、ちょっと感じて、急ぎノートを閉じた。だれかに見られているような気がしたからだ。サラリーマンたちは汗を掻き掻き、相変わらず黙々と稽古に励んでいた。わたしの普通の感想など、だれも聞きとめてくれそうになかった。クハーッ!!
 春眠や磁石となりて瞼寄る

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裏通り

 はなこ豚強(こわ)い毛並みもおぼろなり
 『男はつらいよ』のDVDをまた二本借りて、踏み切りを渡り、国道一号線脇の裏通りをしばらく歩いた。
 昼、越後製菓の「ふんわり名人」を食いながら歩いていたら、小料理千成の女将さんにばったり会い、袋から一個取り出し女将さんの口へ放り込んだのもこの通りだった。「どうです? 美味しいでしょう!」女将さん、目を白黒させて、「うん、うん」と返事をした。
 中華料理店の裏手を左に見、小造りの家を二軒ほど遣り過ごすと、沈丁花の香りがフッと鼻を掠めた。暗闇に白い花弁がぼーと浮かんでいる。
 ほんの数分のことながら、気分も落ち着き、左へ折れて再び国道沿いの道に出た。
 春眠の瞼を指で離しけり

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三つのこと

 イライラの捌け口の無し春うらら
 わかること、いやすこと、つくること。人の世のいとなみで大切なことはこの三つと、どこかで習った記憶がありますが、このごろの楽しみの一つである『男はつらいよ』のDVD鑑賞は、その「わかること」、とりわけ人の気持ちが分かることが生きていくうえで、いかに大事か、また切ないことかを痛いほど分からせてくれます。
 気持ちが分かっていれば仲良くできるかといえば、決してそうではなく、気持ちが分かるからこそ、喧嘩をしてみたり、すれ違いが生じたりします。
 寅さんと寅さんを取り巻く人々の織り成す人間模様を見ていると、人の気持ちが分かることも、ほどほどがいいのかなと思えてきます。
 もとより、自分でさえ自分の気持ちを百パーセント分かっているかといえば、心もとないですからね。
 きのうは、『男はつらいよ 寅次郎恋歌』でした。マドンナは池内淳子さん。
 春の床時計ばかりを気にしている

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はなこツアー

 校正日和前面の蜘蛛背(せな)の春
 久保山のお寺に住んでいるという黒豚はなこを見に、日曜日、散歩がてら出掛けました。
 いましたいました。世話するおじさんは、しょっちゅう、「はなこ。はなこ。はなこ。はなこ。……」
 どこへ行くの、この毛布の上にちゃんと座っていなさい、ほら、お客さんがお前にリンゴをくださるって、ありがたいね、ちゃんとお礼を言わなきゃダメだよ、そうそう、お利口さんだね、写真を撮ってくださるそうだから黙ってポーズをとらないと、そっち行っちゃダメだって、ほれ、こっちこっち、うん、そうだよ、へへ、ほら、おいらの上に乗ってごらん、芸をみせてあげなよ、まず足でしょ、そっちじゃなくこっちの足から、上手上手、……
 そういう意味を含んだ呼びかけを、おじさんはほとんど「はなこ」だけで、上手に区別して使い分けます。見事なものです。
 それに対して、はなこはというと、ブヒブヒブヒブヒ、ブヒブヒ、ブヒブヒ、ブヒ。ブヒブヒブヒブヒブヒブヒ。よく聞くと、これも、なんともいえない微妙なニュアンスを含んでいて、実に味わい深い。
 愛されると、豚もこんなふうな姿態をみせてくれるのかと感心しました。はなこは、とても角煮にはできません。
 春風や媚びる笑ひを叱りけり

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湯気を切り取る

 ぽかぽかと春日曜の散歩かな
 たとえば、ラーメンから立ちのぼる湯気。それがちゃんと写っているかどうかで、写真の印象はずいぶん違います。
 それがバチッと捉えられていれば、その写真が撮られた時間まで豊かなものだったのだろうと想像が掻き立てられます。
 実際の暮らしの場面では、一瞬たりとも時間が停止することはありません。だから、見ているようで見ていないものがたくさんあります。(それはそれでいいとは思います)
 写真は、停まらない時間を静止画で見せることで、普段見過ごしているものの価値を思い出させてくれます。
 真実は人の数だけ春燦燦

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