友人

 桜狩り人の寂しさ散らずあり
以前勤めていた出版社時代からの友人で、
そのころは大手OA機器の販売会社の部長さんでしたが、
現在は、印刷会社の営業職に就いておられます。
仕事で横浜方面に来ることがあると、
電話が掛かってきて、
「三浦さん、いる?」
「おお、いるいる。そばまで来ているね」
となって、ほどなく現れます。
昨日もそうでした。
木のテーブルの角を挟んで直角に相対し、
金魚の話を聞きました。
彼の趣味は金魚です。
祭の金魚すくいで掬ってきた金魚を育てていて、
高価な金魚より丈夫で長生きなのだそうです。
11時半を過ぎたので、ふたり連れ立って
少し早めの昼食をとりに出かけました。
とくになにを話すわけでもありません。
気の置けない友達というのは、
こういうことを指すのでしょうね。
よし、また仕事がんばろう!ってなります。
彼もきっと、そういう気持ちなんでしょう。
 寂しさを重ねて歩く花万朶

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春は?

 青空に光るピンクや花万朶
桜が咲き、やっとダウンジャケットを手放せるかと思っていたら、それどころでなく、
急に初夏から夏を思わせる陽気になってしまいました。
もうすこし春にとどまってくれてもよさそうなものなのに、
どうも、このごろの天候はルール無視のようです。
ことしは、例年になく桜をよく見たような気がします。
こんなに光を反射してきらきら光るものだったかと、
印象が少し変わりました。
これも年齢のせいかもしれません。
この季節になると、
高校で教員をしていた頃の社会科の先輩教師を思い出します。
桜が散った後の新緑の季節の三渓園が一番好きと仰っていました。
授業中、先生の話を聞かず教室が騒然とすると、
生徒でなく先生のほうがそっと抜け出し、
廊下からしばらく様子を窺い、
頃合いを見計らい教室の後ろからそっと入って、
うるさい生徒の頭をぽかぽか殴るという
素敵な技をつかう先生でした。
生徒からネズミ男とあだ名されていたようですが、
もうこの世にはいません。
 カネの世を厭いアバヨの桜かな

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こころを盛る容器

 三渓園散りて華やぐ桜かな
パーティ、イベント、ケータリングサービスを業とする
「山手サービス」の鈴木会長をお呼びし、
弊社十周年の打ち合わせをしました。
こんな面白い打ち合わせなら、
毎日でもいいかというぐらい。
会長さんのお話を伺い、なるほどの連続で、
例えば、
サービスの基本は、「何もない」ことを前提に組み立てる。
「何もない」というのは、
野原のようなところを想定するのかとお聞きしたところ、
まさにその通りで、
地鎮祭などはテントを借りるところから始まるのだとか。
食器を人数の三倍用意するというのも、
パーティの実際場面を考えてみれば確かに
「なるほど」でした。
鈴木会長さん自ら立ち上げた会社で、
いまは息子さんが社長を務めておられるそうです。
こちらの意図を汲んでくださり、
面白いパーティになりそうです。
鈴木会長さんに「お仕事は一つのアートですね」
と申し上げると、目をきらきらさせておられた。
事前のチェック項目が300を越すというのも驚きでした。
 集まりて追ひつ追はれつ桜かな

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人の心がわかること

 桜咲く細目涙の寅次郎
きのうは『男はつらいよ』第19作「寅次郎と殿様」を見ました。
真野響子さん、嵐寛寿郎さんが出ています。
タイトルからもわかるとおり、
嵐寛寿郎さんが扮する役どころは、
伊予大洲五万石、藩祖宗康様より十六代目の当主、藤堂久宗、世が世であれば、大洲の殿様に当たるお方。
その殿様の息子の嫁が真野響子さん扮する堤鞠子。
一年前に夫と死に別れた鞠子が、大洲にある墓を訪れ、
その日宿泊する宿で寅さんと出会う。
物思いに沈みがちに見える鞠子さんのために、
鮎の塩焼きを宿に頼んで出させたり、
土地の名物である川魚の佃煮をお土産に持たせたりする寅さん。
宿の女将に「旅先じゃ、なんでもねえ親切でも心にしみるもんだからよ。頼むぜ」なんて。
こういうところ、いいなぁ。
貧乏でも欠点だらけでも、人の心がわかる寅さんなのでした。
 桜木やアッという間のナポリタン

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70セット

 それを言っちゃあおしめーよ花見上ぐ
 以前勤めていた出版社では、復刻版を中心に、5万〜10万円のセットを200から300セット作っていた。わたしがいた頃だから、10〜20年前ということになる。
 刊行後100〜150セットぐらいが割りと早めに売れ、残りのセットを2、3年、あるいはそれ以上かけて売るという業態ではなかったかと思う。
 昨日、オンデマンド印刷をウリにしている印刷会社の営業マンが来られ、いろいろ聞かせてもらったなかに、この頃の復刻の話があった。
 200〜300セットというのは往時の話で、いまは60〜70セット作ればいいほう。ということは、作っても、すぐに売れるのは30セットぐらいかと思われる。
 復刻というのは、貴重な資料を眠らせず、だれの眼にも触れられるようにするという、出版業のある大切な部分を表現したものであるけれど、資料の閲覧ということでは、インターネットに飲み込まれても仕方がないのかもしれない。資料にプラスするアルファの価値をどこに持たせるかによって生き残りが決まる。なにも復刻版に限らない。
 思い出の男はつらいよ桜かな

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第三の男

 桜見てウツのこころを癒しけり
 こんな夢を見ました。
 マリナーズのイチローとわたしと知人の三人で、目的のものを探して歩いているうちに、ずいぶん遠くまでやってきてしまい、バスもなく電車もなく、だだっ広い丘陵と青い海があるばかりで、そろそろ日も暮れ、こころが折れそうになるのをやっと堪えておりました。
 マリナーズのイチローはチームの本拠地に近いらしく、イチローらしくカッコよく「じゃ、また」とさっと手を上げ、たったったったったっ、と駆けて行ってしまいました。
 知人と二人になったわたしは、気休めとは知りながら磁石を取り出して方位を確かめ、東に向かって歩くことにしました。
 しばらく行くと、漁師たちが集まっていました。群集の間から、黒いぶちぶちが不気味な茶色くぬめぬめと濡れた物体が動くのが見えました。
 もうそんなことに構っていられない気がして、知人を促し、走り出したのですが、この知人、だれだったのかが思い出せません。
 晴れ晴れし鼻を啜りて桜かな

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人生の営業マン

 春陰を天の口笛払ひけり
 『男はつらいよ』のDVD全48作を貸してくださる方がいまして、気の向くまま、好きなときに適当な巻を選び出して見るのがこの頃の楽しみです。
 きのうは、竹下景子さんが登場するシリーズ後半での傑作の誉れ高い第32作「口笛を吹く寅次郎」(1983年)。
 妹さくらの夫・博の亡父の三回忌で備中を訪れた寅次郎でしたが、ひょんなことから寺の和尚と娘の「口笛を朋子(竹下景子さん)と意気投合、二日酔いで腰が立たない和尚の代わりに法事をこなし、朋子に惹かれる寅次郎がそのまま寺に居ついてしまうという筋書き。
 第1作が1969年ですから、すでに14年経っています。寅さんも年取るわけだ。
 竹下景子さん、こんなに綺麗で魅力的だったんですねぇ。
 どの回もマドンナ役として、いわば旬の女優さんが登場しますが、山田監督はその魅力を最大限引き出しているのでしょう。
 しかも「口笛を〜」は、寅さんはもちろん「ほ」の字ですが、竹下景子さんに惚れられるというなんとも羨ましい話。
 婿養子として寺に入ることも考える寅でしたが、そんな簡単に坊さんになれるわけもなく、せっかく惚れられているのに、身を引かなければいけないという、本当に、男はつらいです。
 アスファルト破れ雑誌に桜舞う

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