不審者!?

 

 秋の日や独り出社の時積もる

土、日と、読み進めたい原稿があり、
だれもいない会社で一人、
香を燻らし、机に向かっていました。
哲学の原稿なので、
速くは読み進められません。
三時、四時、五時が過ぎて、
間もなく六時になろうかというときに、
開けたままのドアにスーッと人影がしたかと思ったら、
そのまま静かに部屋に入ってきました。
頭になにかフードのようなものを被っています。
ん。誰!?
……………。
あの。O木です。持って帰りたいものがありまして…。
ああ。O木さん。
おそらく、わたしの目つきがよほどきつかったのでしょう。
不審者を見る目だったのでしょう。
それで、「あの。O木です。」
「あの。これ、片付けましょうか?」
「いや。明日片付ければいいよ」
「お疲れ様です。わたし、帰ります」
「はい。お疲れ様です」
さらに時はしんしんと降り積もっていくのでありました。
外に出たら、雨。
ああ、それでフード!

 電話なく客なく時の沁み入りぬ

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まだ暑い

 

 忙しく働きてふと秋となり

外へ出かけるときのこの頃の服装は、
上はTシャツにトレーナー、
下はジーンズが多くなりました。
やっとそういう季節になったかとホッとします。
ところが、
昼を過ぎた頃からだんだんと蒸し暑くなり、
昨日はTシャツ姿で仕事をしました。
隣の事務所のおばさんから、
「若いですね」と声を掛けられましたが、
若いのではなく暑いのです。
仕事帰り、
さすがにTシャツ姿ははばかられ、
トレーナーを着ましたが、
保土ヶ谷橋の交差点を過ぎ、
階段をえっちらおっちら上りきる頃には、
首と背中にうっすら汗をかいていました。

 薩摩芋食へば甘藷のおならあり

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本が輝いていた

 

 父の剥く柿の甘さに驚けり

「春風目録新聞」第7号が出来ました。
今回の特集は「宝物としての本」。
宝物といえば金でしょう。
というわけで、
今回はなんと金のインクを使っています。
キラキラ輝いています。
詩人の高橋睦郎さんが、
「本が輝いていた」という
素敵な詩を寄せてくださいました。
何度も読み返し、
「そうだ。そうだ。本て、そういうものなんだ」と、
意を強くしました。
飽食の時代の今、
はたして「清い飢え」はあるでしょうか。

 白露を撫でて朝の気もらひけり

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マッチ

 

 一葉ずつ露の宝石ならびをり

こんな夢を見ました。
体育館のような(体育館だったかもしれません)
広い場所に、
大勢の若い男女がたむろし、
ワイワイガヤガヤ、
今や遅しと何かを待っているようなのです。
ふと見たら、
そこに近藤真彦、マッチがいました。
すぐそばに居ましたから、
間違いようがありません。
わたしは、ちょっと驚きましたが、
周りの人は、気づいているのか、いないのか、
あ、マッチだ!マッチだ!
なんてことはありません。
そんな周囲の反応をマッチはどう思ったでしょう。
少し面白くなかったのかもしれません。
つぎの瞬間、
マッチがいきなり、バック転を始めました。
一回、二回、三回、
後方へ勢いよく回転していき、
最後にパッと手を離し、
バック宙をしたかと思ったら床に両足がバンと着き、
その瞬間、マッチの頭から何かがパカッ!
と外れました。
一瞬のことでした。
え!? え!? ま、まさか!?
マッチは、サッと手を伸ばし、
その物体をクッと頭にのせ、押さえつけ、
何事もなかったかのように、
また人びとの群れにまぎれてしまいました。

 山煙り白露きらら輝けり

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読書フォーラム

・左より秋風吹いてやらとかな

一昨日、県と県議会と秋田魁新報が主催する
読書フォーラム秋田2010」に
パネリストとして参加してきました。
主催者側の発表によれば、
450名ほどの参加があったようです。
基調講演は椎名誠さん。
「読むということ、書くということ」がテーマでしたが、
椎名さんは、読むことと書くことの間に
「行くこと」があるとし、
これまでの旅の経験を
笑いを交えながら面白く聞かせてくれました。
90分がアッという間。
さすがでした。
講演後も、アドバイザーとして
ディスカッションに加わってくださいましたが、
会の最後、
「電子教科書」に話が及んだとき、
椎名さんから、
利便性なんかじゃなくて
もうけの論理が支配しているのでは
という指摘がありましたが、
我が意を得たりと思いました。
恩恵より被害のほうが多いのではないでしょうか。
犠牲になるのは子どもです。

・ダマッコやナマスコ添えて食しけり

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記憶の蔵

 

 新刊のインク匂ひし秋の風

東京都文京区の谷根千〈記憶の蔵〉にて開催されている
矢萩多聞展2010」に行ってきました。
千駄木の駅から歩きましたが、
おもしろそうな路地、お店に
目をキョロキョロしてしまいます。
会場の〈記憶の蔵〉はその名のとおり、
どこか懐かしい佇まいを見せ、
居るだけで気持ちのいい場所でした。
多聞さんの絵は、相変わらず細密で
物語性の強い楽しいものですが、
今までと違うなと感じられるものもありました。
どこから来てどこへ向かうのか、
ますます楽しみです。
夜はオープニング・パーティー。
御徒町にある南インド料理のお店
アーンドラ・キッチンのシェフが作った美食を、
インドの地ビールキング・フィッシャーといっしょに堪能。
時間を忘れるほどでした。
19日までの開催です。

 読むでなく捲る頁の秋澄めり

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APEC

 

 身に入みて友と語らふ夕べかな

来月七日から開催されるAPEC首脳・閣僚会議のため、
全国から警察官が集まり警備にあたっています。
桜木町駅近辺は東北ブロックが担当なのか、
おとといは青森、きのうは山形、
今日は秋田といった具合です。
名札をしているのですぐに分かります。
仕事帰りにふと見ると、
青森から来た警官二人が並んで、
みなとみらいの大観覧車を眺めていました。
忙中閑有といったところでしょうか。
横浜駅の改札では、
ちゃらそうなお兄さんが
岩手県の警官四人に取り囲まれていました。
一人二人ならいざ知らず、
四人の警官に囲まれると、
いかにも極悪人が捕まっているという感じがしましたが、
なんのことはない、
職務質問をされているようでした。
ちゃらそうなお兄さん、
ちょっとかわいそうなくらいでした。
あんなに大勢の警官、どこに寝泊りしているんでしょう?
一泊いくらぐらいなんでしょう?
池上彰さんなら知っているでしょうか?

 カウンター皿の鮟鱇笑ひをり

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