箱根ハイキング

 

・秋風と光と踏みし石畳

三連休の中日、
気の置けない仲間と箱根に行ってきました。
箱根湯本駅十時集合、
そこから途中畑宿で昼食をとり、
さらに歩いて箱根神社まで。
江戸時代につくられた石畳の旧街道をひたすら。
箱根八里は馬でも越すがと詠われた路。
この度のコース、
八里はありませんが、
半分ちかくはあったでしょう。
紅葉にはまだでしたが、
広い原のすすきの穂が風に揺られさやさやと、
人間に分からぬ言葉でささやき合っているようです。
きらきらきらと光を放ち。
箱根神社にお参りし、
チーム最年少のひかりちゃんがおみくじを。
大吉。
妹思いのひかりちゃんです。
お守りも。
さて。
ゴールしたからには、
大人はビール、
子どもはジュース、
茶店でぐいと。
うんめーーーーっ!!
この喉鳴らしのための五時間。
病みつきになりそうな山歩きです。

・石畳履みて眼を上ぐ薄原  野衾

マスターズ陸上

 

・異常気象俳句だけでも秋の風

テレビをつけたら、
かなりのおばあさんが
ランニングシャツにショートパンツ姿で
トラックを走っていました。
なんだこれは!?
九十歳の守田さんという女性で、
六十九歳から(!)陸上競技を始めたのだとか。
五歳きざみの年齢別に競技がなされ、
それぞれの部門で日本記録、
世界記録が樹立されるのだという。
これまで九十~九十五歳までの
女子百メートルの記録保持者は、
ノーラ・ヴェーデモさんでしたが、
守田さん、
ヴェーデモさんの記録を破り、
ついに世界記録を樹立しました。
いつもは卵一個だけど、
大会当日は二個食べたというのも笑える。
カワイイ。
守田さん、
元気はつらつ。
テレビを見ていてさらにウケたのは、
一〇三歳のおじいちゃん。
九十六歳のとき、
ウサイン・ボルトの姿を見、
ボルトにあこがれ陸上競技を始めたのだとか。
すごい!
すばらしい!
笑える! 泣ける!
大会に参加している人たちの
どの方の笑顔もすばらしく。
こんな競技があったのか。
知らなかった。
参加資格が
競技歴の有無にかかわらず、
だれでもOKというのがいい。
番組はNHKの「クローズアップ現代」でした。

・秋なのに衣更えせぬ車中かな  野衾

蜘蛛

 

・大海に蟻載せ板の彷徨へり

蚊は殺しますが、
蜘蛛は殺しません。
ダニを食ってくれると聞いたような。
なので、
我が家では
蜘蛛は我が物顔で室内を闊歩しています。
目の前に
つーと糸を垂らして下りてきたり。
蚊も
殺したくはないのですが、
痒くなりますから
ついバシッとやっています。
ぷ~んというあの音もイラッとする。
修業が足りません。
ところで、
共棲する蜘蛛たちが
我が物顔で立ち居振る舞うのは
まあいいとして、
寝ているときに
脛や腹の上を
わさわさ這い回るのはやめてもらいたい。
あ蜘蛛だ、
と思う前に
わさわさ感が気持ち悪く、
それと気づく前に
つい手のひらで払ってしまいます。
微小生物なので、
これで殺られてしまう場合もあるでしょう。
けさがそうでした。
あ。
出てきた。

・秋風や腹に大穴開きにけり  野衾

桐華祭

 

・秋風や朝から電気ほほほほほ

十文字学園女子大学の学祭「桐華祭」
の案内をいただきました。
十文字学園女子大学は
埼玉県新座市にある私立の女子大学で、
今年の四月から七月まで
わたしは外部講師を務めました。
その折、
講座のゲストとして
何名かお招きしたのですが、
二代目高橋竹山(たかはしちくざん)さんも
お招きしたいと思っていました。
初代を受け継いだ
著名な津軽三味線の演奏家です。
学長に
そのことを話したところ、
それならぜひ学祭でということになり、
その方向で竹山さんと交渉してくださり、
今月二十六日、
桐華祭の特別講師として
お越しくださることになったようです。
素晴らしい演奏を聴きにわたしも参ります。
お近くにお住まいの方、
遠くの方もいかがですか。
詳細はコチラです。

・好きなれば三日連続秋刀魚かな  野衾

忘2

 

・哀れ蚊をつかみ損ねて五十肩

U2ていうロックグループがありましたが。
それなりに好きでしたが。
U2でなく
忘2。
ついこの間、
おのれが五十肩であることを忘れて痛い目にあい、
五十肩五十肩と
老婆が念仏唱えるように
肝に銘じていたにもかかわらず、
休みの終日、
本を読んでいての夕刻、
ぷ~んと微かに音がしたから、
ひょいと右手を伸ばし
パッ!でギュッ!
げんこつをにぎった。
うぎゃぎゃぎゃぎゃーーー!!!
痛いの痛くないの。
声も出ず、
右肩を左手で覆ったまま、
スローモーションで
椅子からダダンと転げ落ち、
床に
ダンゴムシのように丸く倒れこんだ。
なおかつ、
蚊には逃げられ。
身の程知らずもいいところ。
嗚呼。

・高値にて腹残さずの秋刀魚かな  野衾

ハリガネムシ

 

・秋深し人生五十五年生

家を出て
保土ヶ谷橋へ向かう階段を下りていたときのことです。
右手二段下で
細い線のようなものが動きました。
ん!?
「なんか動いているぞ!」
家人「え!? なに?なに?」
「ほら!」
家人「あ。よく見つけたわね! なにこれ。気持ち悪い!」
「………」
それはまさに曲がった細い線。
というか、
錆びた黒っぽい針金。
針金が
ギギギギギ…と
音立ててくねっているようです。
むむ。
初めて見ました。
ミミズともちがいます。
色も形も動き方も。
ミミズなら
伸び縮みを繰り返しながら前進しますが、
こいつは全身でもがいているとしか思えません。
ははー。
わかったぞ!
ハリガネムシとかいうものだな。
そうにちげえねえ。
横浜駅まで出かけ
用を済ませ、
家に帰ってさっそく調べたところ、
まさにそいつはハリガネムシでした。
五十過ぎて初めて見ました。
感動!

・コンビニの弁当のよな俳句かな  野衾

いのちが通る

 

・ぱふぱふと煙り吐きそな海月かな

新井奥邃著作集を読んでいると、
ハッと我が身を
振り返らざるを得ない言葉に
ときどき出くわします。
「昵懇」と「親近」もその一つ。
男女を問わず、
親しきもの同士が
別れなければならない理由の多くは、
お互いの関係が
親近でなく昵懇だからであると。
親近は
「愛敬して遠立」すべき関係として、
昵懇は「狎れ親しむ」関係として
イメージされているようです。
これはあくまでもわたしの拙い理解。
哲学者の森信三はかつて、
奥邃の言葉は
(ある一つの言葉について言っているのですが)
意味を理解しようとしても不可、
感じるでもダメ、
なぜなら、
奥邃の言葉によって
「いのちが通る」からだと語っています。
奥邃の言葉は生きていて、
何度試みても
暗唱することができないと。
わたしも暗唱できません。
物忘れがひどくなったからできない
のでなく、
漢文調だからできない
のでなく、
生きている言葉だから暗唱できないのです。
「昵懇」と「親近」についても、
意味の理解とは別に、
その箇所を読んだときの
静かな興奮と緊張は
筆舌に尽くし難く、
目を閉じ
じっとしているしかありません。

・イルカより姐さん見てゐるイルカショー  野衾