中井久夫さん 8

 

中井久夫さんの一冊の本から多く引用してきましたが、
あとすこし続けたいとおもいます。
「世に棲む患者」という書名に魅力を感じていることが大きいのかもしれません。

 

「妄想」それ自体が、実際は、きわめて定義しにくい。いわく、「訂正不能性」
「のりこえ不能(他の考え方がありうるという視点変換ができないこと)」、
「確率の無視(確率のきわめて少ないことをもっともありうることと考えて
恐怖する)」など。
西欧の精神医学者は、妄想の定義に苦しむ。精神病は「理性の病い」である
という固定観念を脱することが難しいからであろう。
それでも、
カトリック作家のG・K・チェスタートンは、
「狂気の人は理性が狂っているのではない。理性以外のすべてが狂っているのである」
と言っている。
「すべて」かどうかは問題であるが、
この発言のほうが的を射ているように私は思う。
(中井久夫『中井久夫コレクション 世に棲む患者』ちくま学芸文庫、
2011年、p.316)

 

(他の考え方がありうるという視点変換ができないこと)や
(確率のきわめて少ないことをもっともありうることと考えて恐怖する)ことは、
多少のちがいはあっても、だれもが持っている資質のような気もします。
「世に棲む患者」というのは、
こういうことも指しているとおもいます。

 

・宿題を七日で済ます夏休み  野衾