アラブ人と詩

 

アラブ人は非常によく詩を嗜む。詩はとくに調べを持っているので、
彼らの言葉の〔表現法の〕うちでももっとも尊ばれた。
アラブ人は詩を歴史や賢明さや高貴を収める宝庫とし、
的確な表現やすぐれた流儀を用いて詩をその天賦の試金石とした。
これはずっと続けられた。
いくつもの詩行に分割したり、
母音にかかわりなく子音の数を等しくすることによって生まれる調べは、
音楽に関する書物をみればわかるように、
種々の調べからすればほんの大海の一滴にすぎない。
しかし、
当時のアラブ人は学問や技術に通じていなかったので、
詩しか知らなかった。
砂漠の生活様式が支配的であったのである。
(イブン=ハルドゥーン[著]森本公誠[訳]『歴史序説(三)』岩波文庫、2001年、p.121)

 

イブン=ハルドゥーンは、14世紀の人。
コーランの読誦性を論じながら、アラブ人の特性を語っています。
ところで、
『アラビアン・ナイト』を読んでいると、
物語の登場人物たちがしょっちゅう詩を朗詠する場面に出くわす。
『アラビアン・ナイト』に登場する人物は、
アラブ人とは限りませんから
一概に言えませんが、
アラブ人の著名な歴史家であるイブン=ハルドゥーンの発言は、
『アラビアン・ナイト』を読むときの参考になります。

 

・夕虹の東と西や切通  野衾