においについて

 

ちかごろ、においにつき、発見というと大げさですが、
個人的に気づいたことがありまして。
ひとつ目。
いつもの部屋で本を読んでいたときに、
家人が蓋の付いた陶器の容れ物をテーブルの上に置いていきました。
わたしはそのまま本を読みつづけていたのですが、
なにやらちょっと変な臭いがする気がした。
ん!?
もしや、
と気になったので、本を置いて台所へ行くと、
家人が「どうしたの?」
「いや、なんでもない」
ほんのり香った匂いが、ガスの臭いに似ていたので、心配になって来てみたのですが、
ふつうに煮炊きしており、
ガスが漏れ出ているようなことはなかった。
???
はて。
もしや。
部屋にもどり、
テーブルの上の陶器の蓋を取ってみると、
塩らっきょう。
あ!
二度三度、
鼻を近づけてみたり遠ざけてみたり。
筋の見える塩らっきょうがあくまでも白く、きらきら輝いています。
なるほどなるほど。
食欲を刺激する季節の香の物ですが、
その匂いが空中にまかれ
薄くなると、
どうやらガスの臭いに近くなる、
わたしの嗅覚は、そのように感じたようです。
ふたつ目。
道で女性とすれ違うと、
ほのかに香水の匂いがするときがありますが、
このごろ幾度か、
ある匂いが鼻に止まり、
何かの臭いに似ている気がした。
なんだろうなんだろう、数日つらつら考えた。
きのう、ふたたびその匂いに遭遇し、
あ、
そうだ、カブトムシ!
って思いました。
子どものころ虫かごに容れ飼っていたカブトムシがありありと思い浮かんだ。
塩らっきょうもそうですが、
ある匂いが空中に散布され薄まると、
別の匂い、また臭いを、
きわめて個人的ではありますが、
まざまざと想起させることがあるようです。

 

・洗濯物しずか夏雲うごかず  野衾