8日、9日の「よもやま日記」

 

5日(金)のこの欄の最後に書くつもりだったのに、うっかり忘れてしまいましたが、
秋田に帰省するため、
8日、9日の「よもやま日記」はお休みします。
よろしくお願いいたします。

 

・とじぇねさは世界の図なり冬の朝  野衾

 

漢和辞典の意外な効用

 

以前に比べ、漢和辞典を開くことが多くなりました。
仕事がら、
辞書を開くことが少なくありません
けれど、
気がつけば、
いろいろある辞典のなかで、
このごろは、
なにかにつけ、漢和辞典を開いているような。
漢字、熟語を調べるのはもちろん、
調べる必要がない時でも、
なんとなく、
ただなんとなく、漢和辞典を持ち出して、
調べるんではなく、
バサリ開いて、
適当に目を近づけ、場当たり的に読んでいる。
これが、ちょっと楽しい。
辞書は『字通』でも、『大漢和』でも、先ごろ購入したけっこうボロボロの
(補修しました)簡野道明の古い『字源』でもよく。
片手で持てないほどの重さがいいのか、
説明が短くていいのか、
親字はともかく、
ほかの文字たちはやたら小さくて、
辞書を開いたときに広がる風景が、空飛ぶ鳥が下を見たら人間も建物も、こんな具合かもな、
と、
妙な想像が浮かんで来るところがいいのか。
分かりません。
が、
そうしているうちに、
なんとなく、
気持ちは、落ち着いてくる。
読書の亀は、このごろこんなところを歩いています。

 

・秋深し珈琲の香の苦きかな  野衾

 

かたちを変えたはっぴいえんど

 

細野がこのころの松本の考えを推しはかる。
「松本のなかには意図があったんだね。大滝くん、ぼく、それから茂もそうだけど、
はっぴいえんどのメンバーを引っぱりだしてきて、
違うかたちではっぴいえんどを再現したいって。
ぼくはYMO、
大滝くんは『ロング・バケイション』でそれぞれ世に出ていったので、
絶好のチャンスだと思ったんじゃないかな。
だからみんな駆りだされて」
松本はその意見に同意する。
松田聖子との仕事に彼らが参加してきたとき、
これはかたちを変えたはっぴいえんどだと思ったと。
解散から八年を経た一九八一年、はっぴいえんどは思わぬ再結集を果たしたのだ。
それに加えて松本には別の感慨もあった。
「はっぴいえんどはヴォーカルが弱かったけど、
松田聖子という最強のヴォーカリストを得て、ぼくたちのポップス魂を満足させた。
みんなアメリカン・ポップスで育ってるからね。
フィル・スペクターは大滝さんの専売特許じゃないでしょう。
細野さんにもぼくにもあるものだから。
女性ヴォーカルっていうのがまたひとつよかったな。
あのころのぼくたちは日本語のロックじゃなく、
本当の日本語のポップスを作ろうとした。
コニー・フランシスを超えられたんじゃないかと思うけどね」
(門間雄介『細野晴臣と彼らの時代』文藝春秋、2020年、pp.349-350)

 

伝説のロックバンド・はっぴいえんどは、活動期間が三年ほどでしたが、
メンバーがその後それぞれ活躍し、
だけでなく、
はっぴいえんどの音楽も各方面で取りざたされ、
また、
テレビ番組のバックに流れたりもし、
いまもその影響力の大きさに驚かされますが、
松田聖子というヴォーカリストを中心に、
はっぴいえんどのメンバーが、再結成でなく、再結集したというこのくだりを読み、
合点がいった気がします。
別の言い方をすれば、松田聖子の歌は、
はっぴいえんどのメンバーを再結集させるほどの磁力を持っていた、
とも言えるのでしょう。
ちなみにコニー・フランシスは、
大滝詠一が音楽を聴き始めのころのエピソードとして必ず語られるもので、
そういう補助線を引いて松本隆の発言を読むと、
よけい面白く感じられます。

 

・おとなしき一日一声寒烏  野衾

 

読者カード

 

矢内原忠雄『土曜学校講義』(みすず書房)の『ダンテ『神曲』』を古書で求め、
このごろ毎朝読んでいますが、
二冊目の煉獄篇に読者カードが挟まれていました。
名前、年齢、住所のほかに、
購読している新聞名、最近買った書物など、青いインクで記されています。
インクの青がやや黒く変色しているところに、
経過した時間の長さが感じられます。
「本書についての御感想」の欄だけが空白になっており、
おそらく、
読み終ってから投函するつもりのところ、
なんらかの理由で、
そのままになったものと思われます。
職業の欄には学生、
年齢は19歳と書かれています。
この本は1969年10月15日に第1刷が発行されています。
その年に買ったものかどうか
までは分かりませんが、
読者カードの葉書の差出有効期限が昭和45年(1970)2月28日、
となっていますから、
1969年10月15日から1970年2月28日までのあいだに買った
ものであろうと想像します。
ひょっとしたら、
本を買ってすぐに書き込めるところを書き、
読み終って感想を書いて出そうとしたときには差出有効期限が過ぎていた、
と、
そういうことかもしれません。
いろいろ想像がふくらみ、
読者カードに記載されていた名前で調べてみました。
ちょっと珍しい苗字の方です。
同姓同名ということもありますから、
断定はできませんが、
1969年から1970年ごろに19歳であること、
通っていた大学の寮の名称、
矢内原忠雄への興味関心
(読者カードの「本書読了後、つづいてどんな本を読みたいとお考えですか?」
の質問に対して「矢内原忠雄全集」と記入されています)
から、
おそらくこの人だろうと思われる方が見つかりました。
その方はいま、
ある幼稚園の相談役をされており、
キリスト教の教会で講演をされたりもしておられます。
どういう経緯でその方の本がわたしのもとへ来たかは分かりません
けれど、
本は旅人、人生は旅であると改めて感じます。

 

・おとなしき冬日をただに暮らしけり  野衾

 

よさそうな名前!?

 

先日、スマホを耳に当てながら、家人がからから笑っていました。
ときどき電話がかかってくる妹との会話のようでした。
電話が終ってから、
わたしが質問するよりも先に、
家人曰く、
「あのね、期日前投票に行ったとき、
○○ちゃんたら、
最高裁判所裁判官の国民審査の表に、三浦守という人の名前があったので、
よさそうな名前だと思って、○を付けたんだって。
あはははは…」
わたしもつられて、
あはははは…。
記入の仕方を読まなかったことによる間違いでしょうが、
わたしとしては、
○○ちゃんに嫌われてなくて良かった!

 

・冬支度終え公園の陽を浴びに  野衾