ヘーゲル

 

・真っ直ぐの道も歪める酷暑かな

ヘーゲルといえば
『精神現象学』などを書いた、
ドイツが生んだ大哲学者。
ですが、
いつごろ初めてあの肖像画に接したのか、
なんて怖そうなお爺さんだろう
って思いましたね。
ぎろりとした目がこちらを睨んでおり、
この爺さんに、
こんな顔で睨まれた日には、
そのまま固まって動けなくなってしまうよ、
そんな風にも。
ところが、
この怖そうなヘーゲル爺さんにも
若い頃はあったわけで。
ヘルダーリンの全集を読んでいると、
ヘーゲルがしばしば登場します。
親友といってもいいでしょう。
ヘーゲルからヘルダーリンへの、
ヘルダーリンからヘーゲルへの
手紙は、
友を思う気持ちが伝わってきて嬉しくなります。
ヘルダーリンは、
家庭教師の就職口を
ヘーゲルに紹介したりもしています。
あの厳つい怖そうなヘーゲルですが、
友を思う気持ちと行いは
誠意に満ち、
若い頃は、
思弁哲学よりも詩的想念に憧れていたふしがあり、
実際のところ
詩を書いてもい(!)ました。
ヘルダーリン全集の四巻目には、
ヘーゲルが書いた詩も収められています。
同時代、
しかも親友
ということであれば、
お互いに影響しあうほうが
むしろ当然で、
ヘーゲル哲学の底には、
叙情の川が滔々と流れているのでしょう。

・彼も吾もしかめっ面の酷暑かな  野衾