紙をよむ

 

・蝉つまむ羽の根元の強きかな

電子書籍が登場して以来、
紙の本、電子の本といういわれ方もされますが、
紙の本を読むというのは、
紙に書かれた文字を読むというよりも、
紙そのものを読んでいるのではないかと
このごろとみに感じます。
どの本でも
というわけにはいきませんが、
たとえば、
手塚富雄さんが中心になってされた仕事、
河出書房新社からでた
ヘルダーリン全集がそうでした。
詩や書簡類を読んでいるうちに、
紙の精神が上手に汲み取られ、
人間にもわかる言葉に置き換えられたものを読んでいる、
そんな気がしてくるのです。
ケータイやパソコンのメールでなく、
手の紙を読むような感覚にちかく。
アーダルベルト・シュティフターの『晩夏』も
そのような一冊。
こちらは、
藤村宏さんの訳で、
筑摩書房からでています。

・ゆらゆらと酷暑に向かふ旭日かな  野衾