差し歯

 

・あちこちを泳ぎこちらにこちが来る

栗田出版販売が民事再生法適用の申請を申し立てた
ことに関しての
債権者への説明会における、
きわめて人間的な内容については
きのう書いたとおりですが、
生物学的な観点から申しますと、
ちょこっと触れたとおり、
会場の冷房が効きすぎていて、
寒いの寒くないの、
極寒の地にいるかのごとくぶるぶる震えがき、
このヤロー、
債権者を早く帰したくて
それで冷房をキンキンに効かせているのだな、
なんて、
意地悪く考えたりもしましたさ。
とにかく寒かった。
そう感じていた人は少なくなかったようで、
あちこちから、
寒いね寒いね寒いね寒いね…
アニマル浜口は、
気合だ気合だ気合だ気合だを連呼しますが、
こちらは「寒いね」の輪唱。
ちかくの人の声は大きく、
とおくの人の声は小さいので、
ドップラー効果よろしく、
寒いね寒いね寒いね寒いね寒いね寒いね寒いね……
ところが。
笑ってしまったのは、
知人Mさんからのメール。
Mさんも当日の説明会に来ていたらしく、
彼は、
夏用のマフラーを首に巻いていたそうです。
さすが、
哲学科を出た人は用意周到。
生に対する日ごろの心がけがちがう。
さらに笑ってしまったのは、
Mさんが帰り際、
トイレに寄ったときのこと、
小便器の下に差し歯が落ちていて、用を足しながらひとり苦笑したと。
差し歯をしていた彼氏、
おそらく、
あまりに寒すぎて、
からだも震えたけれど、
歯もガタガタガクガクと震えだし、
それで差し歯をトイレの便器に落としたのだろう。
便器の材質までは
確認してこなかったけれど、
陶器だとすれば、
かなり大きな音がしたと想像される。
債権が回収できず、
差し歯まで脱落したとあっては、
その債権者にしてみたら、
踏んだり蹴ったりもいいところであったろう。
でも、
面白い。
おかしい。
よもやまネタを提供してくれたMさんに感謝。

・名も知らず食してごめん夏野菜  野衾