賀状書き

 

・来期はと画する仕事納めかな

会社では、
みな静かに年賀状を書いています。
バックにブライアン・イーノの新作『LUX』
なごむなぁ。
お香まで焚いているし。
社業14年目に入ったおもさをつくづく感じます。
単体での仕事はもとより、
プロジェクトとしての仕事が
とみに多くなったことを体感する
とは、
営業で外回りをしている専務イシバシの言。
わたしは、
あんまり商売が好きでありませんから、
短期での粗利益ばかりを求める仕事をしたくない。
そういうのって、
どこか薄っぺらくなる気がします。
おもしろくて少し儲かる仕事がしたい。
おもしろさが一番!
どこでおもしろさを感じるか。
手間のかかるところ。
ああめんどうくさいなぁと、
折々に感じ、思っても、
それがあとからじわりと効いて、
ああおもしろかった!
となるのが、
体と心の真実であるようです。
いい仕事をしている人とのご縁をたいせつにし、
来年もひと踊りしようと思います。
春風社は今日が仕事納め。
来年は七日から。
この日記もしばらくお休みします。
皆様、どうぞよいお年を。

・腰痛め腹痛めして年の暮れ  野衾

マハーヴァギナまたは巫山の夢

 

・ものいはぬ空を湛へて山眠る

三冊目となる自著を上梓しました。
小説です。
以前勤めていた出版社時代に、
スーパーエディター安原顯さんを知り、
歯に衣着せぬ
おもしろいことを言う人だなあと思っていたら、
安原さんを中心として
創作学校なるものができました。
安原さんに会いたい一心で応募し、
めでたく第一期生になったはよかったのですが、
毎週のように小説を書かされ
困ってしまいました。
小説など書いたことがなかったからです。
とんでもないところに来てしまったとホント思いました。
それでも根がマジメ(笑)なものですから、
見よう見まねでこつこつやっていたら、
褒められるようになり、
最高点を取ったりもして、
すぐに増長しました。
俺さまが本気を出せばこんなものよダハハハハ。
まったく田舎モノです。
そんな時でした。
いつだかの授業で、
安原さんの講師席に呼ばれ、
わたしが提出した小説を題材に、
その場で文章を徹底的に直されました。
バッキャヤロー!!
わたしは、だぁ!!
いちいち主語をつけてんじゃねーよっ!!
源氏物語の昔から、
日本語は主語がなくてもわかんだよっ!!
ほとんど罵倒の連続。
いや、びっくり。
増上慢の鼻はへし折られ。
眼が ・ ・
他人からあんなに頭ごなしに怒られた、
叱られたことはありません。
わたしの場合、
子どものころから
だいたい褒められて育ちました(笑)から。
安原さん、
もう顔を真っ赤にして、
口角泡を飛ばしていきり立っています。
そばにいて、
なんというか、
だんだん、
安原さんと二人で
コントでもやってる気になっていました。
そして、
直感が走りました。
ははあ、
この気合いでかからんといけないのだな。
文というのは、
これぐらい、
のりうつったり
のりうつられたりするものなんだな。
そのとき感じたことを、
安原さんに申し上げませんでした。
その後、
わたしは仲間と春風社をつくり、
安原さんの本も二冊出させていただきましたが、
安原さんから発せられた問いについては、
手付かずのままになっていました。
『出版は風まかせ』『父のふるさと』を出したあと、
その問いがだんだんふくらみ、
ふくらんで、
空気頭になっていくようで、
このままではいけない気がしました。
けじめ、とでもいいましょうか。
ですから、
今回の本は、
安原さんからいただいた問いへの答案でもあります。
解説は、創作学校で
安原さんといっしょに定期講師を務めておられた、
フランス文学者で学習院大学教授の
中条省平さんがご執筆くださいました。
挿画は、林晃久さん。
装丁は、間村俊一さん。

・寒さもてあらゆるものを閉じ込めよ  野衾

吐いたら五千円

 

・ブレーキをかけたいほどの師走かな

会社に置いてある本を紙袋に入れ
家に持ち帰ろうとしたら、
相当な重さだったので、
ギックリ腰をやった腰を庇い、
タクシーで帰ることにしました。
会社を出てすぐの交差点を渡ったところで
黄色のランプが見えましたから、
手を挙げて後部座席に乗り込みました。
個人タクシーで、
よく話す運転手さんでした。
朝から寒かったこと、一年がはやいこと、
これから政治はどうなるんでしょうね、みたいなこと。
「ところで、この時期はたいへんなんです。
いえね。お客さんで、
けっこう吐く人がいるんすよ。
具合が悪くて吐く人をこっちは怒れないですもんね。
でも、わたしのこの車、シートが布張りでしょ。
吐瀉物の臭いが染み付いてなかなか取れない。
まいっちゃいます。
忘年会で呑みすぎるのか知らないけど、
女の人が静かになったなぁと思っていると、やばい!
寒いところから温かい車の中にくると
ムカムカしてくるんですかね。
お詫びのしるしにお金をくれる人もいるけど、
合いませんよ。
法律でも条令でも作ってくれればいいんです。
タクシーに乗って吐いたら五千円とか…。
あ、そこを左ね。はい」

・呆けても年の暮れへとまつしぐら  野衾

誕生日プレゼント

 

・ぽかぽかと西高東低気にならず

近所に住むりなちゃんから、
うれしい誕生日プレゼントをいただきました。
なんともすてきでかわいいテイッシュ入れです。
下絵を描きデザインを考え、
布を用意し、
こつこつと精密に仕上げてくれた
手作りのティッシュ入れです。
刺繍のすばらしさに驚きました。
ふくろうは、
わたしの好きな鳥なので、
あしらってくれのでしょう。
ティッシュ入れは日常使うものですが、
こころのこもったものですから、
使いたくても、
なかなか使う気になれません。
しばらく飾っておいて、
ゆっくりながめ、
それから
大切に使いたいと思います。
ありがとう、りなぴ。

・湯に浸かり時間の味の揺蕩へり  野衾

気分爽快

 

・マスクして眼鏡曇りて前見えず

ギックリ腰、ノロウィルス(たぶん)と、
ワンツーパンチでダメージを受けた今日この頃でしたが、
おかげさまで、
けさは久々すっきり気分。
昨夜九時から朝の六時半まで、
途中一度トイレに起きたものの、
ぐっすり眠り、
変な夢も見ませんでしたから、
ほぼ回復したとみていいでしょう。
テレビを点ければ、
北国の大雪を報じており、
すべって空中に身を投げ出され
ステンと転ぶ人を見ると、
ギックリ腰をやって間もない人間には、
他人事と思えず、
つい我が腰を手でさすってしまいます。
故郷秋田の友人なるちゃんから
写メールが届きました。
屋根に積もった雪が端からせり出し、
落ちようとして落ちきれず、
「おやつはカール」状態になっているとのメール。
見ればたしかにスナック菓子のカールそっくり!
座布団一枚進呈です。

・雪国のテレビに転ぶ痛さかな  野衾

夜中

 

・ギックリ腰治って今度はノロウィルス?

疲れたなあ疲れたなあと思い、
首都圏ニュース845の奈実ちゃんを見ても心はずまず、
早々に布団に潜りましたが、
夜中、
何時ごろだったでしょうか、
眼が覚めたら猛烈に気持ち悪い。
ああ、気持ち悪い、
やばいやばい、吐きたい吐きたい、
家人も目を覚まし、
紙袋を二重にし、
キッチンタオルを敷いて持ってきてくれた。
もう数秒遅れていたら、
布団の上を吐瀉物の海にするところでした。
吐いたら楽になり、
眠ったようでしたが、
一時間ぐらいしたら、また気持ち悪くなった。
新しい二重の紙袋にまた吐いた。
今度は胃液のみ。
それからはよく眠って、
眼が覚めたら、
すっかりさっぱりいい気分。
いま流行りのノロウィルスだったんでしょうか。
まあ、いずれにしても、
よくなって良かった。
ああ驚いた。

・吐き気して二度捲られて戻りけり  野衾

サンデー毎日

 

・奈実ちゃんを見て寝る明日は氷点下

ギックリ腰が日に日によくなり、
もうふつうの暮らしに戻してもよさそうなのですが、
大事をとって、
きのうは午後からタクシーで出社。
紅葉坂の交差点でタクシーを下り、
マイカフェへ。
ドアを開けると、
ご飯を炊くいい匂い。
最初の分が捌けて、二度目なのでしょう。
週に一度は通うお店ですが、
いつもと時間帯が異なるため、
お客さんの顔ぶれも違っています。
ちょっと別のお店に入ったみたい。
石橋から借りている登山用のストックを見、
ママが小声で「ギックリ腰?」
つられてわたしもつい小声になり、
「はい。今日はご飯ふつう盛りで」
いつもは黙っていても大盛りなのです。
「腰に負担がかかるから?」と、ママあくまで小声。
わたしもつられて「そういうわけでも…」と小声。
カウンターの空いた席に着き、
手持ち無沙汰にしていると、
後ろの丸テーブルに陣取ったおばちゃんたちが
賑やかに話しています。
ママさん、
「もうすぐご飯が炊き上がりますから、
少々お待ちください」
すると、
丸テーブルのうちの一人が、
「いいのいいの。ゆっくりで。
わたしらサンデー毎日なグループだから」
ん?
サンデー毎日?
そうか、なるほど。
サンデー毎日。
すなわち毎日が日曜日…。
うらやましい!
おばちゃんに座布団一枚。

・ギックリも悪くないなと強がれり  野衾