冬の月

 

・気が付けばさむさむばかり呟けり

自宅が山の上にあるため、
帰宅の際は七十数段ある階段を上ることになります。
上り終えた後も
ゆるくカーブしつつ坂が続くので、
見晴らしのいい場所まで来ると、
つい、
「ああ、こえ」と呟いてしまいます。
こえ、は、
秋田弁で「疲れた」の意。
こえの「え」は若干「や」に近い。
保土ヶ谷駅を通過する電車がおもちゃのように見えます。
ふと見上げると、月。
ああ、なんていい月。
凄艶の趣とでもいうのか知らん。
それぞれの季節でいいですけれども、
寒さのなかで見る月はまた格別。
月の周りがうすく黄色に染まっています。
坂の途中のここが
ちょうど一息つける場所なので、
意識しなくても、
天気さえよければ、
毎日変化する月をただで楽しめます。
一日の終りを意識します。

・プルースト毛布を巻いて後すこし  野衾