小食は金なれど

 

 棒洟を拭い遊びし冬の子ら

小食は金と悟ったので、
ココイチのカレーを食べに行った昼、
いつもなら、
野菜カレーにイカの唐揚げとソーセージを
トッピングしてもらうのですが、
ソーセージは我慢し、
イカの唐揚げだけ載せてもらうことにしました。
ゆっくり味わって食べました。
なんだか少しだけ大人になった気分です。
ほんのちょっとしたことで、
人生観が変ります。
一日の仕事が終り社を出たら、
無性に腹が減っています。
どうしたんだろう?
こんなに腹が減って。
はたと気付きました。
そうか。
ソーセージを載せなかったからだ。
そう思ったら、
ますます腹が減り、
ひもじくさえ感じてきました。
人生観も何もあったものではありません。
保土ヶ谷駅で電車を降り、
コンビニに直行。
このあいだ買って帰って、
家人に全部食われてしまったカルビーのポテトチップス
「こだわりのバター味」を買い、
歩きながら袋を開け、
一枚口中へ。
と。
うっめー!!!!!
目に花びらが舞うほどの美味しさです。
袋に「とまらない美味しさ!」と書いてあります。
然り!
保土ヶ谷橋の交差点を渡り、
急な階段を上って家に着く頃には、
袋はすっかり空になっていました。
夕飯を食べ、落ち着き、
己の未熟を身をもって知りました。

 雪見れば雪しんしんと降り積もり

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小食は金

 

 鱈ちりの白子食ぶ子の頬紅し

料理を美味しくいただくというのは、
人生の大きな喜び、
二番、いや一番かもしれません。
腹八分目が健康にいいと言われても、
実践するのはなかなかむつかしい。
この週末、
ハタハタ料理を鱈腹食べたら、
翌朝、首筋から背中が凝っていました。
あれ? と思いました。
どうも食べ過ぎによって胃が働きつづけ、
周辺の筋肉にまで疲れが残ってしまったようです。
そんなことがあり、
昨日は昼に少し食べただけで、
夜は食べずに寝たところ、
今朝はすこぶる体調がよろしい。
小食は金であることを身をもって知りました。

 大鍋に鱈を浮かべて海来り

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クギラ?

 

 気功して冬の迷ひを断ち切りぬ

行きつけのお店のカウンターに、
お酒の壜が置かれていました。
ラベルには水しぶきが飛んできそうなクジラの絵。
と。
下にアルファベットが記されています。
KUGILLA
ふむ?
クジラと読むんでしょうか?
どうも、クギラと読みたくなります。
ゴジラがアメリカで映画化されたときは、
GODZILLA
これにならえば、
KUDZILLA
カタカナ表記すれば、
クッジーラみたいなニュアンスでしょうか?
でも、これはこれで、
日本の古式捕鯨からは離れていくような…。
江戸の狂歌師・大田蜀山人は、
いさなとる 安房の浜辺は魚偏に 京という字の 都なるらん
と詠んでいますから、
KUGILLAにしても
KUDZILLAにしても、
日本の鯨とは違ったものになりそうです。

 あら汁の小骨刺さって焦りけり

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バルザック

 

 冬空や雲なく何もしたくなし

バルザックといえば『人間喜劇』。
東京創元社から全二十六巻の全集が出ています。
いまは、これを読むのが何よりの楽しみ。
続けて読むうちに、
喜劇の意味が少し分かってきた気がします。
悲劇的な人生が悲劇的過ぎて、
笑ってしまいますから。
意地の悪い奴はどこまでも意地悪く、
女好きは、
女房がそのために命を短くしたというのに、
とことんやっぱり女好き。
このごろ、
編集長のナイ2くんが古書店で全集を購入し、
朝読を始めたので、
二人で、ああだこうだと言いながら、
バルザック論議に花を咲かせています。
バルザックについて、
ふむ、
なんだかドン・コサックみたいで強そうだな、
と言ったのは畏友・渡辺郁夫くん。
なるほど!?
言われてみればたしかに。
バルザック。ドン・コサック。
どちらも「ック」で終っている、てか。

 電話切り机上の寒さ眺めをり

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ハングル仏典の粋

 

 つるつると乳房眩しき銀杏の実

今月19日付『週刊読書人』に
「ハングル仏典の粋『釈譜詳節』」と題し、
訳者である河瀬幸夫先生の文章が掲載されました。
経済行為のみがもてはやされがちな現代、
インドから始まり世界に広まった仏教を、
国の礎にしようと努力した
先人たちの業績に触れることは、
悠久の価値へのいざないとも感じられます。

 冬晴れのいのち繋ぐやおんな展

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最後の語り

 

 柿の葉や風に揺られて離れけり

竹内敏晴さんの最後の本『レッスンする人』(藤原書店)
を読みました。
竹内さんは、昨年九月七日に亡くなりましたが、
死の直前の約三か月間に語り下ろされた内容を
まとめたものだそうです。
最後の最後まで、
薬を拒み、考えることを止めず、
集中して語る竹内さんの語りは、
常人のなすところではありません。
巻末にある愛娘・米沢唯さんの
「父と私」には泣かされました。
さすが竹内さんのお嬢さんだと思いました。
唯さんがおっしゃるように、
どこでどんな舞台に立っても、
(唯さんはダンサーです)
竹内さんは黒い帽子に黒いコート姿で、
頷きながら拍手しているにちがいありません。
生前、わたしは直接、
竹内さんから唯さんの写真を見せてもらったことがあります。
「親バカだね」とおっしゃって、
珍しく、はにかんでおられたのが印象に残っています。
亡くなる三日前、
奥様の米沢章子さんが
「人生で何が一番楽しかったの?」
と質問したのに、
竹内さんは「……あぁ。唯を育てたこと。」
と答えられました。
わたしも、
竹内さんがこの世からいなくなったとは思えないのです。

 空澄みて闇より白し冬の月

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10年後のわたしたちへ

 

 壁伝いに真っ逆さまの冬の蜘蛛

横浜女学院中学二年の生徒さんたちのよる
職場体験学習が終了しました。
「わたしの好きな本」をテーマに書いた
自分の原稿を持ち寄り、
それに基づいて一冊の本を作ります。
今回はフランス装という上製本。
帯には、「10年後のわたしたちへ」とあります。
「この手でつくった世界にたった一冊の本」とも。
電子書籍がブームだよと声高に叫ぶことがブームの今、
本とは何かをいっしょに考えた二日間でもありました。
永倉聖奈さん、石井菜緒さん、佐藤舞さん、
お疲れさまでした。

 セーターを出して落ち着く夕べかな

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