飛翔

 

 夜寒し火照った頭を冷ましけり

きのう、野毛方面へ坂を下りていた時のことです。
下から上ってくる初老の女性が、
手を大きく回して何かを振り払いました。
見れば、茶色いものがはらはらと宙を舞い、
道に落ちましたから、
なんだ枯葉か、と思いました。
風に舞う枯葉を
生き物と勘違いしたのかもしれません。
あんな大げさに振り払わなくても…。
女性とすれ違い、
わたしはどんどん下へ歩いていきました。
すると、
車道に落ちていた茶色い枯葉がバッと飛翔し、
頭上を越えて歩道の横の崖に張り付いたではありませんか。
は~!!
枯葉と思ったのは、大型のバッタでした。
それで、あの女性。
感心して見上げていると、
後から来た男性が
「バッタですか?……珍しいですね」
と言い、
わたしと並んでしばし崖を見上げました。
なんだか、うきうきしてきました。

 ビル群がせせら笑ひし夜寒かな

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