APEC忘れ去られし冬の月
週に二回はドジョウを食べます。
子どもの頃秋田で食べたのは、
同じドジョウでも、
ほかになんにも入れない、
ただ醤油で濃く味付けしただけの煮たドジョウでしたが、
それでも美味しくてよく食べました。
夕方弟と罠を仕掛けに行き、
翌朝早くに取り上げに行くのです。
竹で編んだ罠を持ち上げた瞬間、
ドジョウがウニュウニュと動いて、
どれぐらい獲れたかが重さで分かりました。
家に持って帰り、罠の栓を抜き、
バケツにどさりと黒い塊となって落ちた
ドジョウを見たときの快感は忘れることができません。
イモリが紅い腹をひるがえし、のたくっています。
イモリを取り除き、
適当な量のドジョウを小鍋に入れて煮るのは、
母か祖母の役目です。
押さえた蓋にバチバチとドジョウがぶつかります。
押さえていないと、
どこまで跳ぶか分かりません。
それぐらい力がみなぎっている。
数年前、
怪我と病気で全く食欲が失せた時、
ただドジョウだけは食べたいと思って、
野毛坂をとぼとぼと下り、
福家さんに向かったものでした。
ドジョウは、だから、わたしの元気の源です。
午前四時寒さしんしん降りにけり