怪しい人

 

 秋深しかさこそ音の舞ひ降りし

きのうの日曜日、
午後から出社し静かに仕掛かりのゲラに向かいました。
どんなに楽しい人、親しい人でも、
人といっしょにいるときと、
独りでいるときとでは心のありようが違います。
そういうことを思うようになったのも、
つづけている禅密気功のおかげかもしれません。
ところで、
我が社が入っているビルの四階には
五〇〇人ほどを収容できるホールがあり、
休日ともなるといろいろな催し物が開かれますが、
きのうはダンスの大会があったようで、
四階のみではなく、
一階から四階まで廊下も階段も
人、人、人でごった返していました。
ダンスと言ってもいろいろですが、
男女ペアで手を握り合い、
互いの口臭を避けるように顔をそむけ
ふんぞり返って踊るスタイルは、
あれは社交ダンスというものでしょうか。
トイレの中で、
相手の女性と組んだ気になり
練習している初老の男性もいました。
夕刻、
外がようやく暗くなり、
部屋の電源をチェックして鍵をかけると、
退出のための警告ブザーが鳴ります。
急いで部屋を出たら、
顔を化粧で塗りたくった駝鳥のようなおばさんが、
「まあ! 怪しい人かと思ったわ」
まあ! 怪しい人かと思ったわ。
ふん。こっちのセリフだわい。
「はははは。怪しい人ではありません」
俺はまた、あなたが駝鳥かと思ったよ。

 ブラジルを淹れて地球をひと廻り

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