最後の語り

 

 柿の葉や風に揺られて離れけり

竹内敏晴さんの最後の本『レッスンする人』(藤原書店)
を読みました。
竹内さんは、昨年九月七日に亡くなりましたが、
死の直前の約三か月間に語り下ろされた内容を
まとめたものだそうです。
最後の最後まで、
薬を拒み、考えることを止めず、
集中して語る竹内さんの語りは、
常人のなすところではありません。
巻末にある愛娘・米沢唯さんの
「父と私」には泣かされました。
さすが竹内さんのお嬢さんだと思いました。
唯さんがおっしゃるように、
どこでどんな舞台に立っても、
(唯さんはダンサーです)
竹内さんは黒い帽子に黒いコート姿で、
頷きながら拍手しているにちがいありません。
生前、わたしは直接、
竹内さんから唯さんの写真を見せてもらったことがあります。
「親バカだね」とおっしゃって、
珍しく、はにかんでおられたのが印象に残っています。
亡くなる三日前、
奥様の米沢章子さんが
「人生で何が一番楽しかったの?」
と質問したのに、
竹内さんは「……あぁ。唯を育てたこと。」
と答えられました。
わたしも、
竹内さんがこの世からいなくなったとは思えないのです。

 空澄みて闇より白し冬の月

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