Archives : 10月, 2010

本の自炊

 

 水溜りに黄色い月の揺れてをり

ふつうの自炊なら知っていますが、
本の自炊があることを知りませんでした。
読み終って処分に困る本を断裁し、
スキャンし、
パソコン等で読めるようにした後に、
ばらした本を捨てるのだそうです。
ネットで調べたら、
これを業としてやっている会社もあるようです。
自炊というぐらいですから、
もちろん自分でしこしこやる人もいます。
わからないでもありませんが、
これってなんだか、
かさばるレコードをしこしことテープに録音し、
元のレコードは古レコード店に売る
みたいな印象があります。
結局そんなことしたって、
録音したテープは、
さほど聴かずじまいになるのにね。
今はなんだか、
モノを持たないのが流行りで、
持つのはダサイみたいな風潮があるようです。
電子書籍も幾分、
その流れにあるのではないでしょうか。
何千冊の本がコレに入っていて、
好きなときにいつでも取り出して読める、
みたいなことがかっこいいと思っているのでしょう。
それはそうかもしれないけれど、
紙であろうが液晶画面であろうが、
機械が本を読んで、
そのエキスが頭と心に自動的に注入される
(そういうものがあったら欲しい!)ならともかく、
どんな機械が出てきても、
眠い眼をこすりこすり読むのは
やっぱりこちら側の人間で、
いくら速読の人でも
『失われた時を求めて』や『大菩薩峠』や『聖書』を
一時間では読めません。
読んだって意味はありません、
と思います。
この頃の風潮は、
そういうことをちょっと錯覚してるようです。
させられているのかな?

 名物と詠わる男鹿のブリコかな

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 打ち寄せしブリコの海の円さかな

ただいま朝の五時ですが、
外は真っ暗です。
室内気温は20度。
やっと秋らしい秋になりました。
Tシャツにトレーナーという格好も、
一週間前なら、
会社に着くと暑くて上を脱いでいましたが、
昨日はそんなこともなく、
汗をかくことなく、
快適に過ごすことができました。
昨日から読書週間です。
わたしの朝読は、
白井喬二の『富士に立つ影』が
そろそろ終りに近づいてきましたので、
これが終ったら、
またバルザックに戻るか、
それともマルカム・ラウリーの『火山の下』にするか、
菅江真澄の『遊覧記』にするか、
ユーゴーの『レ・ミゼラブル』にするか、
山本周五郎の『虚空遍歴』にするか、
それを考えるのもちょっとした楽しみです。
お。
夜が明けてきました。

 秋深し本を読みたき心地して

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四択

 

 神の魚北の潮を宿しけり

いきなりですが、
①中身がわかって、おもしろい本
②中身はわかるけれど、つまらない本
③中身はわからないけれど、おもしろい本
④中身がわからず、つまらない本
本について、
たとえば上のような分類が可能な気がします。
自分が買った本だとした場合、
④は最悪。なんでこんな本買ってしまったんだー!
②は、読み終わったら売るか捨てるか。
①は、しばらく本棚に置いておく。
気分がいいと再読し、悪いと売り払う。
③も再読の可能性が高く、
なかなか売ることも捨てることもできません。
中身がよくわからないのにおもしろいということは、
意味とちがうモノサシが働いているのでしょう。
最近のものだと、
『グーテンベルクからグーグルへ
――文学テキストのデジタル化と編集文献学』がそうでした。
脳細胞が刺激されているな、という感じ。

 華やぎて夜のしじまの薄かな

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ゴルコ3点

 

 酔っ払いふらり横断秋の風

さいとうたかをのマンガに
『ゴルゴ・サーティーン』があります。
麻生太郎元首相はこのマンガがたいそう好きで、
全巻持っているそうです。
それはともかく、
このごろアルバイトで来ているY田君は、
グレーのYシャツに細目のネクタイを締め、
ストライプの入ったスーツ姿で営業に出ています。
もみ上げが長い。
Y田君に、「ゴルゴ・サーティーンみたいだね」と言うと、
「そうですか。ありがとうございます」
「ゴルゴを意識しているの?」
「いえ。でも、鏡を見て、ちょっと思いました」
Y田君は、とても素直です。
少年のような初々しさがあり、
営業先の大学の先生たちからも可愛がられているようです。
なので、Y田君をゴルコと呼ぶことにしました。
ゴルコ3点。
いっぱい仕事を取ってきたら、
ゴルコ満点。
ダメなときはゴルコ減点。
全然ダメなときはゴルコ零点。
生き生きと楽しそうに仕事をしています。

 ふるさとは鮭の炙りし匂ひなり

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不審者!?

 

 秋の日や独り出社の時積もる

土、日と、読み進めたい原稿があり、
だれもいない会社で一人、
香を燻らし、机に向かっていました。
哲学の原稿なので、
速くは読み進められません。
三時、四時、五時が過ぎて、
間もなく六時になろうかというときに、
開けたままのドアにスーッと人影がしたかと思ったら、
そのまま静かに部屋に入ってきました。
頭になにかフードのようなものを被っています。
ん。誰!?
……………。
あの。O木です。持って帰りたいものがありまして…。
ああ。O木さん。
おそらく、わたしの目つきがよほどきつかったのでしょう。
不審者を見る目だったのでしょう。
それで、「あの。O木です。」
「あの。これ、片付けましょうか?」
「いや。明日片付ければいいよ」
「お疲れ様です。わたし、帰ります」
「はい。お疲れ様です」
さらに時はしんしんと降り積もっていくのでありました。
外に出たら、雨。
ああ、それでフード!

 電話なく客なく時の沁み入りぬ

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三浦衛(みうら・まもる) 春風社代表にして自慢大王&悪ノリ大王。体調のいいときは自らを天才と称し、不調の折はちりあくたにも劣るヤツとしょんぼり。

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三浦衛の本


『カメレオン』
 三人ときどき声にならぬ声を洩らし/とろけ とろけ 唾までとばし/クヂるとナメるとネヂるとチョす…(「鳶」) 自在に色を変え、不意に突き刺さる、軽妙なことばの戯れ。秋田方言満載の詩集。本文は金属活字による活版印刷。


『マハーヴァギナまたは巫山の夢』
 三平佐世夫は、千一夜の夢うつつで女と戯れ、印度に旅し、睾丸を抜かれ、鰐を飼い、横浜を彷徨う。言語の崖っぷちを綱渡りする、めくるめく冒険。本文活版印刷に美麗造本を施した平成の大奇書。


『父のふるさと』
 父の目に映じた故郷の風土、ひと、くらし、農事を、愛惜をこめ描きだす。本文は金属活字による活版印刷。「身と蓋函」に納める。


『出版は風まかせ』
 横浜の出版社「春風社」社長が本づくりと会社経営にまつわるエピソードを豊富におりまぜ、創業から10年を振り返る。