Archives : 6月, 2009

うれしい床屋さん

 ぶん回し青大将を叩き付く
なじみにしている床屋さんがありまして、
月に一度は事前に予約を入れ頭を刈ってもらいに行きます。
このごろますます髪の毛が減り、
坊主刈りでもありますから、
仕上げまで二十分と掛かりません。
日曜日に電話をしました。
「今日、空いてますか?」と訊くとだいたい
「残念ながら空いています」と、
トホホな答えが返ってくることが多いのですが、
今回は違っていました。
「いやぁ、あいにく一日ふさがってましてね。
夕方七時ぐらいでしたらなんとか」
かみ殺してもうれしさが声ににじみ出ているようです。
「あいにく一日ふさがってましてね」
言いたかったんでしょうねぇこのセリフ。
約束の七時をちょっと過ぎたころに訪ねると、
前の人がまだ終わっていませんでした。
五分ほど待ってわたしの番になり、
椅子に腰掛けました。
「よかったじゃないですか」
「ええ、朝の六時半からかかって休みなしです。
これでやっと先月より少しよくなったぐらいですかね。
でも、こんなのは年に四回ぐらいですから…。
お客さんの後もう一人予約が入っているんですよ。
十四時間働いたことになります」
「帰ったら一杯ですね」
「ええ。久しぶりに旨いビールが飲めま、あ、
いらっしゃいませ。そこに掛けてお待ちください」
さっぱりしておカネを払うと、
長髪の青年がソファから立ち上がった。
 ぶん回し青大将が卵吐く

4a4932912f67e-090607_0947~0001.jpg

ちっちゃいミカン

 ビル掠め一陣の夏かぐはしき
秋田の父が送ってくれたミズ(山菜)で
ミズタタキをつくりました。
ミズタタキには山椒が欠かせません。
一粒つぶすだけで柑橘系の芳香が辺りに漂います。
調べてみたら、山椒は
ミカン科の落葉低木だそうです。道理で。
出始めの頃の青いミカンの香りにそっくりです。
直径二、三ミリのあんなちっちゃい粒でも、
おいらを馬鹿にしちゃあいけねえ、
ちっちゃくてもミカンなんだぜ、
とハッキリ主張しているようです。
ナマの汁がくちびるに付いて腫れるひともいるぐらいです。
 ゴキブリがジグザグ這ひずるアスファルト

4a47e3c0b2706-090607_0951~0001.jpg

似ている人

 六月の大安吉日晴れやらず
祖父トモジイの友人で、
毎日自転車に乗りヤクルトを配達していた人
(だれ言うともなくヤクルトおじさんと呼ばれていた)は、
前島密(まえじま・ひそか 1円切手の肖像になっている)
に似ていた。
小学校の教科書でその人の写真を見たとき、驚いた。
郵便制度の父と呼ばれた前島密が密かに
(などとダジャレを言ってみる)
生まれ変わって今度は
ヤクルトを配っているのかと思った。
世の中に三人似ている人がいるというけれど、
あれは衝撃的だった。
このごろだれかに似ているなという人が二人いる。
一人は、タレントのせんだみつおによく似た女性。
せんだみつおの芸名は、
千に三つしか本当のことを言わないからということらしいが、
ナハ、ナハ、ナハ、ナハ、というのがネタの
鼻のでかい、あまり面白くない芸人で、
最近はとんと見なくなった。
そのせんだみつおによく似ている女性がいる。
紅葉坂の途中ですれ違うのだが、
いつも心なしか悲しそうに坂を下りてゆく。
小さい頃から、せんだみつおせんだみつお、
やーい、せんだみつお。せんだみつおにそーーーっくり!
なんて囃し立てられてきたんだろうな。
もう一人、紅葉坂ですれ違う人で、
なにかに似ているなあ似ているなあと思いながら、
それと定められずにきた女性がいたのだが、
先日、富士花鳥園に行ったとき、
そっくりの、人でなく、鳥がいた。
しばらくその前から離れられなくなった。
それが下の写真です。
以来、すれ違うたび、
この鳥が服着て歩いているとしか思えなくなった。
 にょっきりとランドマーク梅雨に入る

4a43f0f9de624-090607_0916~0001.jpg

父からの電話

 梅雨浸透青汁瓶の裏表
東洋英和女学院大学へ行ってきた。
閑静な山間にあるキャンパスは大きすぎず、
自然と一体になっており、学ぶにはいい場所と思われた。
大学の先生方三人と打ち合わせをしている最中に
鞄の中の携帯電話が鳴った。
プロディジーのホット・ライド、うるさい曲だ。
電話の着信に父の名前が表示されている。
条件的な話の緊張した沈黙が流れているときだったから、
余計あわててしまった。あわてて、
どこのボタンを押していいのか分からなくなり、
結局、最後まで曲はつづいた。
打ち合わせが終わり、建物の外へ出てから、
父に電話した。何か急用でもあったのか?
「電話したろう。どうした?」
「午前中、山に行ってミズを採ってきたからさ。熊は出なかったよ」
「そうか。それはよかった」
「金曜日の夜に届くように送るからな。作りかたは、このあいだ母さんから聞いたろう」
「うん。分かってるよ」
「じゃあな」
「はい。どうも」
ミズという山菜を叩いてつぶして味噌と山椒とあえる
ミズタタキが食いたいかと前の電話で訊いてきたから、
ああ食いたいと言ったので、
さっそく父は山へミズを採りに行ってきたのだ。
「熊は出なかったよ」というのは、
そのときの話で、町にこのごろ熊が出没しており、
くれぐれも注意するようにとのお触れが
有線放送で流れているとの話に由来する。
ミズタタキは食べたいけれど、熊が心配だから、
送ってくれなくてもいいよと改めて
父に電話していたのだが、
父はわたしの警告を無視し山へ入り、
ミズを採ってきてくれたのだった。
だから、
「仕事の最中に電話してくるな」とはとても言えなかった。
 青汁を飲んで六月沈みをり

4a429cdf3377e-090607_0934~0002.jpg

躾か胃腸か 2

 原因を忘れなほ鬱梅雨湿り
昨日ここに記したテラチーくんの問題は、
一応の結論を見ましたので紹介します。
仕事の打ち合わせを終え社に戻ったテラチーくんに、
よもやま日記を見るように指示したところ、
ほどなくわたしのところにやって来て、
「どちらかというと胃腸が原因かと思われます」
あくまでも真面目なテラチーくんなのでした。
ところが、思わぬところから反響がありました。
ほかの用件で橋本カメラマンに電話をしたのですが、
橋本氏いわく、
テラチーくんに関する分析は、二つとも正解でしょう。
しかし、もうひとつ忘れてならないのは、
テラチーくん、おそらく無意識のうちに
立ちたいのはないだろうか。
ずっとデスクワークでパソコンと睨めっこをしていて
血の巡りが悪くなっているから、
体が立って血の巡りがよくなるように
指示しているのでしょう、云々。
電話を切った後、
橋本氏の分析をテラチーくんに伝えたところ、
テラチーくん、ちょっと小首を傾げ、言下に、
「それはないと思います」
「無意識ということもあるじゃないか」と、わたし。
すると、テラチーくん、
「無意識ですか。それならあり得ます」
あくまでも真面目で、礼儀正しく、
ここのところめっきり果物の皮むきが上手になった
テラチーくんです。
 荒梅雨の空いっぱいの馬の腹

4a41488b780d5-090623_0905~0001.jpg
Archives

You are currently browsing the 港町横濱よもやま日記 blog archives for 6月, 2009.

三浦衛(みうら・まもる) 春風社代表にして自慢大王&悪ノリ大王。体調のいいときは自らを天才と称し、不調の折はちりあくたにも劣るヤツとしょんぼり。

2009年6月
« 5月   7月 »
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  
過去の日記
最近のコメント
三浦衛の本


『カメレオン』
 三人ときどき声にならぬ声を洩らし/とろけ とろけ 唾までとばし/クヂるとナメるとネヂるとチョす…(「鳶」) 自在に色を変え、不意に突き刺さる、軽妙なことばの戯れ。秋田方言満載の詩集。本文は金属活字による活版印刷。


『マハーヴァギナまたは巫山の夢』
 三平佐世夫は、千一夜の夢うつつで女と戯れ、印度に旅し、睾丸を抜かれ、鰐を飼い、横浜を彷徨う。言語の崖っぷちを綱渡りする、めくるめく冒険。本文活版印刷に美麗造本を施した平成の大奇書。


『父のふるさと』
 父の目に映じた故郷の風土、ひと、くらし、農事を、愛惜をこめ描きだす。本文は金属活字による活版印刷。「身と蓋函」に納める。


『出版は風まかせ』
 横浜の出版社「春風社」社長が本づくりと会社経営にまつわるエピソードを豊富におりまぜ、創業から10年を振り返る。