Archives : 5月, 2009

節目

 春暮るる日がな文字見て失語せり
第85回京都フォーラムで新井奥邃が取り上げられ、
(京都フォーラムですが、シンポジウムが行われたのは新宿)
わたしも声を掛けられ、発題させていただきました。
討論で話し合われた内容がテープ起こしされ、
事務局から送られてきたので、
ひと月ほど掛けて自分の箇所を校正しました。
今秋、東大出版会から刊行されます。
字面だけの校正なら、
詰めてやれば一日もあれば十分だったでしょう。
それをひと月も掛けてやるというのは、
(しかも自分で話したことを)
いかにもサボっているようにも思えますが、
けして言い訳でなく、
ことばを直すことでからだがととのってくるのを
からだに聴いて待ちます。
ひとつの言葉を思いついて記すと、
からだがイヤイヤをします。
しばらく時間が過ぎ、別のことばが浮かび、
ん! と閃き、それを記します。
すると今度は、からだがたのしそうに弾んでいます。
OKをもらったようで、こっちまで
(からだも自分なのに変ですね)
たのしくなります。
そんな探りかたで、愉しみながら
この10年をまとめた本を出します。
タイトルは、
『本は死ねない おとぼけ社長10年史』
四六判300ページ、予価1260円(税込)
今年9月、刊行予定です。
 雨止まぬ日を清々と青田かな

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uni・ball

 初夏の風ゲラを三歩で手渡せり
三菱鉛筆株式会社の水性インクボールペン
「ユニボール ビジョンエリート」は優れもので、
これを使い始めてから、他のボールペンは言うに及ばず、
愛用していた万年筆も、この頃は、
とんと使わなくなりました。
書き味がなんとも滑らかで気持ちよく、
ペンを走らせているうちに夢見心地となり、
つい、紙からはみ出てしまいそうになります。
(ちょっと大げさ?)
それぐらいの滑らかさです。
筆跡を見ても、とてもボールペンとは思えません。
メーカーのホームページには、
「ユニボール ビジョンエリートは、日本に先駆けて海外でデビューしました。すでに、北米を中心としたビジネスマンの間で大きな人気を獲得。その性能の高さは、世界で実証済みです。」
とあります。
これまでボールペンを最後まで使い切ることなど、
そうはなかったのですが、
これを使うようになってから、
すでに6、7本は使い切っているでしょう。
なんでもそうですが、最後まで使い切ると、
ものを大事にした感じがして、気持ちいいですよね。
このボールペン、確かに革命的だとは思いますが、
ただ一つ難点は、使っているうちに、
軸の部分のプラスチックにヒビ割れが生じることです。
たまたま一本がそうかなと思っていたら、
何本もそうなります。
ここが改善されれば、もう「鬼に金棒ユニに敵なし」でしょう。
 鰆焼き半分ずつでご飯二膳

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トモジイの最期

 意味よりも声ころころと友の春
わたしの祖父は、いまから8年前の
平成13年5月29日、98歳で亡くなりました。
ながいきでしょ。
友治と書いて、ともじ。トモジイです。
茶目っ気のあるトモジイが大好きでした。
よく憶えていることがあります。
結婚したぼくのおばさん
(ですから、トモジイの娘)が
実家(つまり、ぼくの家)にあそびに来て泊まり、
朝、化粧をしていたら、
トモジイが
化粧する娘の顔をまじまじと眺めていて
娘にこっぴどく叱られていたことです。
酒に酔ってから自転車に乗り、
苗代に自転車ごと突っ込み、
泥だらけで帰ってきたこともありました。
そのトモジイが、亡くなる2週間ほどまえに、
どうしても見たいと言って
娘(上の化粧のむすめではありません)に頼み、
介護施設から連れ出してもらったそうです。
ぼくは、そのとき横浜にいたので、
トモジイが亡くなってから
その話を聞きました。
さて問題です。
トモジイが最後に見たかったもの、
それはいったいなんだったでしょうか。
はい。それは稲の苗です。
ぼくの父(トモジイの息子)が育てている稲の苗。
それを見たトモジイは、
もう思い残すことはないと言ったそうです。
それから2週間とたたないうちに
トモジイは亡くなりました。
このあいだ秋田に帰ったときも、
父は大事に稲の苗を育てていました。
 十周年春酒友を酔ひつぶす

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もらい泣き

 天からの滴り受けし十周年
23日土曜日の十周年パーティーが終わって
ケータイ電話を見たら、父からの着信があった。
が、社を出たとき
時計の針はすでに10時を廻っていたから、
その日電話をするのは控えた。
なにしろ夜の8時には床に就くひとたちなのだ。
明けて日曜日、
さっそく秋田へ電話を入れた。
電話口に出た父に、前日の模様をなるべく詳しく説明した。
父は合いの手も挟まずに、ただ、
ふんふん、ふんふんと聞いているばかりだった。
最後に、「とにかく無事に終わってよかったな」と言った。
昨日、わたしは遠路はるばるお越しくださった町長に
父からもお礼を言ってほしい旨を伝えたくて、
朝、ふたたび電話をした。
今度は母が出た。
母が言うことには、
パーティーの様子を母に伝えながら父は、
よほど嬉しかったのか、
感極まって、話の途中でワッと泣き出したそうだ。
すると、今度はそれが母にうつり、
母までもらい泣きをして、
ふたりで、おいおい泣いたというのだ。
その話を母から聞き、初めは大笑いしたのだが、
そのうちに、わたしまで目頭が熱くなってきた。
どうにも涙もろい一族です。
 ことことと十周年の春が行く

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ありがとうございました

 町長来(らい)十年(ととせ)の春を寿げり
23日土曜日、
天候にも恵まれ、おかげさまで、
十周年のパーティーを無事終えることができました。
お集まりいただいた皆様、ありがとうございました。
右も左も分からずに、
ただがむしゃらに走ってきた十年でしたが、
これを境に、謙虚を旨とし、
次の十年に向け、0(ゼロ)から始める覚悟です。
皆様、どうぞ、これからも春風社を
よろしくお願い申し上げます。
 祖父の目の下に広がる植田かな

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三浦衛(みうら・まもる) 春風社代表にして自慢大王&悪ノリ大王。体調のいいときは自らを天才と称し、不調の折はちりあくたにも劣るヤツとしょんぼり。

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三浦衛の本


『カメレオン』
 三人ときどき声にならぬ声を洩らし/とろけ とろけ 唾までとばし/クヂるとナメるとネヂるとチョす…(「鳶」) 自在に色を変え、不意に突き刺さる、軽妙なことばの戯れ。秋田方言満載の詩集。本文は金属活字による活版印刷。


『マハーヴァギナまたは巫山の夢』
 三平佐世夫は、千一夜の夢うつつで女と戯れ、印度に旅し、睾丸を抜かれ、鰐を飼い、横浜を彷徨う。言語の崖っぷちを綱渡りする、めくるめく冒険。本文活版印刷に美麗造本を施した平成の大奇書。


『父のふるさと』
 父の目に映じた故郷の風土、ひと、くらし、農事を、愛惜をこめ描きだす。本文は金属活字による活版印刷。「身と蓋函」に納める。


『出版は風まかせ』
 横浜の出版社「春風社」社長が本づくりと会社経営にまつわるエピソードを豊富におりまぜ、創業から10年を振り返る。