躾か胃腸か

 梅雨階段匂ひ常世に滑り落つ
きのうのことでした。
編集長ナイ2から、
梅津八三(うめづ・はちぞう)の肩書きは何かと訊かれ、
ただの心理学者じゃつまらないしなあと思い、
心理学ならテラチーくんだと気がつき、
テラチーくんに声をかけました。
テラチーくんは自分のパソコンを離れ、
わたしのそばまでやって来て、
「はい。なんでしょう?」
「テラチーくん。梅津八三の肩書きは何だろうか?」
「はあ? 心理学事典を調べれば出てくると思いますが…」
「そうか。ウィキペディアにはなんて出てるかな?」
「あ。そうですね。調べてみます」
そう言ってテラチーくんは
自分のパソコンがある場所まで戻りました。
それから数分後、テラチーくん、おもむろに立ち上がり、
わたしのところまでやって来て、
「梅津八三は発達心理学者です」と答えました。
わたしは、うなりました。
ふつう、自分の席から大声で、
「しゃちょー、うめづはちぞうは、はったつしんりがくしゃでーす!」
とか言うでしょう。
テラチーくん、そんな失礼なことはせずに、
きちんと自分の席から上司のところまでやって来て、
「梅津八三は発達心理学者です」
すばらしい! 家庭の躾のたまものでしょう。
なかなか出来ることではありません。
と、そう考えたのですが、
はたと思い出したことがありました。
テラチーくん、胃腸があまり丈夫でない。
胃腸薬に滅法くわしく、「ザ・ガード」の愛用者でもあります。
ちびまる子ちゃんの同級生の山根くんを彷彿とさせます。
よく他の社員から聞き返されています。
要するに、声がちょっと小さい。
そうすると、きのうの出来事は躾のよさに起因するのではなく、
胃腸の弱さにその原因を求めるべきだったのでしょうか。
テラチーくん、どうよ?
 梅雨の夜や物みな青く光りをり

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