Archives : 11月, 2006

甘口

 カレーの。よく行くカレー専門店で、思うところあってシーフードカレーの甘口を頼んでみた。美味くなかった。
 まずルーだが、辛味が少なくなったというよりは水で薄めたような味でコクというものが全く感じられない。また、エビ、ホタテ、イカなどの具も、目を閉じて食べたら何を食べているのかわからないだろうと思われるような、いわば味のない味。硬さが違うだけの消しゴムでも食しているみたい。というようなわけで、適度な辛さにごまかされていた、わけではないだろうが、美味しいと思って食べていたシーフードカレー、特に具、素材としての味はとても美味とは言えないものであることが判明した。

パン

 高校生の頃、昼に弁当だけでは足りず、パンを食べた。昼時になるとパン屋さんが学校に来て販売していた。弁当+パンで腹は満たされそうなものだが、パンというのは、わたしにとって当時どうもお菓子みたいなもので、それで昼食がおしまいになるというのはなんとも心もとなかった。それで、さらに学食に行きラーメンを食べた。満腹になった。
 ところが最近わたしはよく、というほどではないけれど昼食をパンで済ますことがある。前後に弁当もラーメンも食べない。十代の頃の食欲と今を比べるのはおかしいが、食欲だけでなく、パンの種類が当時と比べ圧倒的に豊富になり、米飯で育ったわたしでも十分満足できるパンが今はある。とはいっても、週に1回程度だが。

天才

 世に天才と呼ばれる人は数多くいるが、万人に知られていなくても天才はいるのだろう。最近読んだ本『万病を治せる妙療法 操体法』の著者である橋本敬三氏(1993年没)もその一人。橋本氏は明治30年福島県生まれ。西洋医学を修めるも、それに満足しない患者が民間医療を頼っていく姿を目の当たりにする。民間医療を施す人々を訪ね、名人と聞けば自ら頭を下げ、その技を教えてもらい集大成した。それが体操の二文字を逆にした操体法である。
 操体法の基本となる考え方は、どこかに痛みがある場合、そこを無理に動かすことをしないで、動かして気持ちのいい動きを探すことにある。「とにかく痛みから逃げる運動でよくなるのですから、全身に馬鹿力を入れずにフワーリと気持よく動いて全身運動すれば、その個所の痛みは消えるようになっているのです」。橋本氏はまた、「人間は動く建物である」ともいう。この考え方は西式体操で有名な、これも天才の誉れ高い西勝造氏も言っており、部分より全体のバランスを見ていくということで共通している。天才と呼ばれる人は、体とこころと精神を尽くし、一代で物事の本質に迫り本質をつかむようだ。そして、それはなかなか伝承されにくい。

営業スタイル

 出張している奥山さんからの電話で、大事な仕事を1本決めたとの報告あり。よかった。専務イシバシから毎日次から次と営業の要諦を聞かされている若手二人だが、なかなか期待通りにはいかない。奥が深く、マニュアル化できない難しさがある。教えられることはどうしても言葉によるしかなく、それを現場でどう応用できるか。最終的には生まれ育ちも含め、それぞれの地金の個性が現れ、相手の話をよく聞き、提案し、双方の了解へと至るしかない。地金の個性が現れるまでには、もやもやした一般的な知識が吟味され取り除かれる必要がある。難しい仕事のなかに喜びと楽しさを見つけてくれたらと願う。

膝ギャザー

 先日、カメラマンの橋本さんが来社した折のこと。いつものように、わたしの机のところでふたり椅子に座り、膝がくっつくぐらいの距離で、いろいろと仕事のことやそうでないことなどを話した。橋本さんの服装は、厚手のセーターにジーパン。その時、わたしの眼は何度も橋本さんの右膝に奪われた。椅子に座っているから、本来なら膝のところは引っ張られ丸く張られるはずなのに、そうなっていない。手のひらを膝頭にあて、そこに小さな山でも作るみたいに布が手繰り寄せられギャザーになっているのだ。
「どうしたの、それ」とわたし。
「え?」と橋本さん。
「膝」
「あ、これ。破れたから自分で縫ったんだよ」
「破れたまんまが流行だから縫うことないのに」
「それじゃダメなんだよ。破れたところから運が逃げていくから」
「そうかな」
「そうですよ」
「それにしてもさ、もっと上手く縫ったらどうなの。布が中央に寄っているし、糸もそれしかなかったの? かなり目立つよ」
「あはははは…。ここに座ってから三浦さんがちらちらちらちら見るからさ、よほど気になるんだろうなと思っていたけど、やっぱりか。そういえば、電車の中でもね、高校生たちが俺のほうをちらちら見ていたよ。俺を見ていたんじゃなく、膝を見ていたんだな」
「そうだと思うよ。ここを見てくれっていうほど目立つもの」
「そんなに」
「かなり。橋本さんらしくて、いいけどね。でも、すごいね、その縫い方。わざと布を寄せて縫ったみたいだし、普通は、……………… となるところが、- - - - - - - - だもの。高校生も見るはずだよ。あはははは…。しかし、それ、何度見てもすごいね。見てるだけで元気になるね」

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三浦衛(みうら・まもる) 春風社代表にして自慢大王&悪ノリ大王。体調のいいときは自らを天才と称し、不調の折はちりあくたにも劣るヤツとしょんぼり。

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三浦衛の本


『カメレオン』
 三人ときどき声にならぬ声を洩らし/とろけ とろけ 唾までとばし/クヂるとナメるとネヂるとチョす…(「鳶」) 自在に色を変え、不意に突き刺さる、軽妙なことばの戯れ。秋田方言満載の詩集。本文は金属活字による活版印刷。


『マハーヴァギナまたは巫山の夢』
 三平佐世夫は、千一夜の夢うつつで女と戯れ、印度に旅し、睾丸を抜かれ、鰐を飼い、横浜を彷徨う。言語の崖っぷちを綱渡りする、めくるめく冒険。本文活版印刷に美麗造本を施した平成の大奇書。


『父のふるさと』
 父の目に映じた故郷の風土、ひと、くらし、農事を、愛惜をこめ描きだす。本文は金属活字による活版印刷。「身と蓋函」に納める。


『出版は風まかせ』
 横浜の出版社「春風社」社長が本づくりと会社経営にまつわるエピソードを豊富におりまぜ、創業から10年を振り返る。