おとぼけオーギュスタン

 ウチから『名刀中条スパパパパン!!!』を出し、最近『ただしいジャズ入門』も出している、学習院大学の仏文教授・中条省平氏が、わたし(三浦)のキャッチフレーズを考えてくださり、フランスからメールで送ってくださった。
 この男の坊主頭のなかではアバンギャルド魂とおとぼけオーギュスタンが激突している。
というもの。よく分からない。けど、なんだか凄い。だって激突、だもの。
 昨年七月に送ってくださったのだが、プリントアウトし、そのまま大事に仕舞っておいた。アバンギャルド魂はなんとなく分かる。中条氏にそう評されるなんて、ありがたい。さて「おとぼけオーギュスタン」。これが分からない。アバンギャルド魂に対抗する言葉として、しかも「激突」という並みでない単語を用いているので、どうしても知りたい。調べたら、あった。ありました。1995年度カンヌ国際映画祭[ある視点]部門公式上映(ジュネス賞)受賞作品の映画だった。さっそくDVDを取り寄せ、この度やっと観ることができた。うれしい言葉をこの欄で紹介するのに時間が掛かったのはそのせい。
 オーギュスタン・ドス・サントス、32歳、俳優志望。保険会社の訴訟課で1日3時間38分働き、日々俳優のオーディションを受けて暮らす独身男。キャスティング・ディレクターとの面接の日を間違えた上、「変な役やマイナーな役、それから三枚目役と肉体的接触(セックスシーン)は勘弁してください」と答え、オーディション用写真にスピード写真を持参するというオトボケぶり。(後略)
 DVDのライナーから引用すると、オーギュスタンとはそういう男。DVDを実見。相当抜けている、いや、その、オーギュスタンという男がだ。何を考えているのか? といった感じ。せっかくオーディションに合格したというのに…。
 そこで、はたと気がついた。はは〜、中条氏は、わたしのことを「何を考えているのか?」と思ってくださっているのか。それも、ありがたくもうれしい好意を持って。スパパパパン!!!の中条氏がそう評しているのだ。ふむ…。となれば、そのご好意になんとしても報いなければならぬ。
 ということで、これからますますアバンギャルド魂とおとぼけオーギュスタンを激突させながら、本づくりにいそしむことにする。