11月に入りめっきり寒くなってきた。さむ、さむー、と身を縮かませているからよけい風邪を引きやすいのかもしれない。
あわてて電車に乗りやれやれと思っていると、そばでごほんごほんと咳き込み風邪菌を撒き散らしている若者がいる。気付かれぬようにその場を離れドアの近くに逃れるのだが再びごほんごほん。見ると、今度は厚化粧と派手な衣裳が目立つ女性。嫌いではないが、風邪は困る。さらに遠くのドアのほうへ。このように、このごろは電車に乗ったからといってなかなか気をゆるせないのだ。
パラマハンサ・ヨガナンダの『あるヨギの自叙伝』を少しずつ読んでいる。クリヤ・ヨガを欧米に伝えるべく遣わされたヨガナンダの生涯は物語として面白く、また、この世について深く豊かに教えられるようで、わくわくと子供に戻ったような気にさせられる。
きのう読んでいたら、1枚の写真に眼が釘づけになった。「1920年10月ボストンで開かれた国際宗教自由主義者会議出席者の一部」とクレジットが入った写真。ヨガナンダの横に内ヶ崎作三郎が写っている。内ヶ崎といえば、奥邃を敬愛し、謙和舎の隣りに移り住んだような人だ。奥邃の身近にあって奥邃の生活ぶりからその思想を血肉化していたであろう内ヶ崎は、稀有のヨギ・ヨガナンダと何を話したろうか。何も話さなかったと考えるほうが無理だろう。話したとすれば何を。
もうひとつ。ヨガナンダはサンタローザを歩いている。サンタローザは、奥邃のいた新生同胞教団のあった場所。偶然といえば偶然。必然といえば必然か。不思議だ。
作家の村上龍とタレントの小池栄子が司会進行役をつとめるテレビ東京の「カンブリア宮殿」にテレビ通販会社ジャパネット高田の高田明社長が出ていた。
商品を声高に宣伝するときとは打って変わり、いたって物静かな話しぶりに好感をもった。村上龍から最後に、社長の悩みはと訊かれ、100年後200年後にも世間から必要とされる会社であり続けるための基盤づくりということを語っていた。100年200年はともかくとして、自分の欲得のためでなく、古いが世のため人のために尽くすことの幸いを噛み締めるような言葉つきにすっかり魅せられてしまった。焦点が定まらない時間のなかに、大事なものをポンと置かれたような気がした。
ひと月ほど前から、近くの歯医者へ行き、数回、歯と歯茎のあいだのポケットにある歯石を除去してもらっている。ふつうの歯石なら、ギーンと鳴る例の機械でやれば短時間で済むのだが、ポケットの中となると、そうはいかない。
先の尖った曲がった針状のものでガリガリガリガリやる。かなり痛い。最初の回が終わったとき、担当してくれた歯科衛生士の若い女性に、「ずいぶんガリガリやるもんなんですね」と言ったら、間髪入れずに、「はい。岩にへばりついているフジツボのようなものですから、ちょっとやそっとでは取れないんです」と、巧みな比喩を交え明解に答えてくれた。「フジツボ、ですか」「はい。フジツボ。何か…?」「いえ。喩えが的確だなと思ったものですから…」。若い歯科衛生士は、もう、わたしの感想には取り合わずに、「今日は左の上半分をやりました。次回は右の上半分をやります」とだけ言った。「はい。ありがとうございました」
フジツボねぇ。ガリガリやられて歯が浮くような感じがし、歯と歯茎のあいだに住むというフジツボを思い浮かべた。
玄関に竹細工の傘立てが置いてあった。以前住んでいたアパートから運んだものと思われる。底のプレートが外れてしまい、ガムテープで補強していたのだが、濡れたままの傘をたたんでそのまま入れたりするものだから、みすぼらしくなってきた。玄関は、すべての気の入口であり、家の顔だそうだし、思いきって買い換えることにした。
ひとつどうしても腑に落ちないのは、底のプレートをガムテープで補修した覚えがまったくないこと。わたし以外の誰かがやったのか、それとも、傘立てを前に住んでいたアパートから持ってきたという記憶がそもそも誤りなのか。どうでもいいことには違いないのだが…。
このごろ「気」について考えている。見えないから余計だ。この世は気に満ちている。見えなくても。東洋的なものの考えかもしれないが、万物は大きな気の流れに共振しているのだろう。人間も動物も植物も鉱物も。朝、カーテンを開けると、朝日がバッと飛び込んでくる。光線が動いているように見える。これによって、われらは生かされている。一瞬の光陰を生きている。
先日、社員全員でカラオケボックスへ行った。このごろわたしは酒を止めている。必然カラオケで歌うこともなくなっていたから、久しぶり。好きなサザン・オールスターズの曲を次から次と入れ、歌ったのだが、声が出ず、へたばった。最後の1曲「エロティカ・セブン」になって、やっと少し声が出るようになった。
若手社員の歌に関する覚書。ティファニーは、「いい日旅立ち」が彼女の印象にぴったりで、聴いていてすがすがしい。マサキチとサラによる「キューティーハニー」は何ともかわいく、鼻の下伸び放題。♪ いやよ いやよ いやよ 見つめちゃいやあああん。ハニー フラッシュ!! 口数少ないオカダンディーの「黒い花びら」にぶっ飛ぶ。
