山の記憶

 橋本深、矢萩英雄の2人展を見に行ってきた。橋本という人は初めてだが、矢萩さんとは旧知の仲。というか、多聞君の父上。版画家だ。英雄のヒデをとり、親しみを込めヒデさん、ヒデさんと呼んでいる。
 ヒデさんは以前、月の輪熊をテーマに個展を開いたことがある。テーマにしたのはいいが、月の輪熊が描けずに困ったことがあったそうだ。版画家をやめてしまおうかとも思ったという。その辺の経緯を「春風倶楽部」に書いていただいた。悶々と悩んでいたヒデさんの前に、なんと、月の輪熊が現れた! 俺を描こうたってダメさ。俺を描きたきゃ山を描け。そう言って、ヒデさんの顔をベロベロ舐めたという。
 今回のヒデさんのテーマは「山」。「山の記憶」と題された数枚の木版画があった。ずっとあれからヒデさんのなかに山が居座っていたのだなと思った。2人展は東横線綱島駅東口から歩いて1分のところにある「ギャラリーこやま」にて今月27日まで。