みんな頑張っている

 

 アスファルトヘッドライトの凍へをり

このところ休日出勤つづきで少々疲れ気味。
でも、
電話も音楽もなく、
一人静かに原稿に向き合う時間は格別で、
仕事がとってもはかどります。
二時間があっという間に過ぎます。
顔を上げ、
ちょっと休むか、のタイミング。
エレベーターで下に下りました。
メールボックスにドサッと郵便物が入っていました。
アマゾンに注文していた漫画もあるようです。
社に戻り、
郵便物を仕分けし、
わたし宛のものを読んでから、
アマゾンの分厚いドでかい茶封筒を開けました。
久住昌之原作、谷口ジロー作画『孤独のグルメ』【新装版】
「話題のロング&ベストセラーが、ここに復活!」
なんて帯に書いてあります。
読むのは、
あとの楽しみにとっておくことにして、
ぱらぱらページを開き、
最初に戻ってもう一度ページを開いたら、
目次の裏ページに目が釘付けになりました。
ブックデザイン………日下潤一+長田年伸+浅妻健司
と書いてあるではありませんか。
おおおおおおお!!!!!
疲れが一瞬で吹っ飛びました。
長田年伸くん。
大学の卒業論文に新井奥邃を取り上げたことも縁となり、
卒業後、春風社に入り編集者になった人です。
編集の仕事をしながら、
だんだんデザインのほうへの興味が強くなったようで、
さらに勉強するべく退社しました。
これまで春風社がもらった二度の造本・装幀に関する賞の
一つは、長田くんのデザインによるものです。
仕事を終え、
戸締りを確認し、外へ出たらすでに真っ暗です。
『孤独のグルメ』を家に持って帰り、
夕飯を済ませ、
『孤独のグルメ』を開きました。
長田くんがデザインした本だと思うと、
うれしくて、うれしくて、
最後まで読んでしまいました。
みんな、頑張っているんだなあ。
きのうは、いい日でした。

 休日出勤カチリと鳴りし冬のゴキブリ

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本の自炊

 

 水溜りに黄色い月の揺れてをり

ふつうの自炊なら知っていますが、
本の自炊があることを知りませんでした。
読み終って処分に困る本を断裁し、
スキャンし、
パソコン等で読めるようにした後に、
ばらした本を捨てるのだそうです。
ネットで調べたら、
これを業としてやっている会社もあるようです。
自炊というぐらいですから、
もちろん自分でしこしこやる人もいます。
わからないでもありませんが、
これってなんだか、
かさばるレコードをしこしことテープに録音し、
元のレコードは古レコード店に売る
みたいな印象があります。
結局そんなことしたって、
録音したテープは、
さほど聴かずじまいになるのにね。
今はなんだか、
モノを持たないのが流行りで、
持つのはダサイみたいな風潮があるようです。
電子書籍も幾分、
その流れにあるのではないでしょうか。
何千冊の本がコレに入っていて、
好きなときにいつでも取り出して読める、
みたいなことがかっこいいと思っているのでしょう。
それはそうかもしれないけれど、
紙であろうが液晶画面であろうが、
機械が本を読んで、
そのエキスが頭と心に自動的に注入される
(そういうものがあったら欲しい!)ならともかく、
どんな機械が出てきても、
眠い眼をこすりこすり読むのは
やっぱりこちら側の人間で、
いくら速読の人でも
『失われた時を求めて』や『大菩薩峠』や『聖書』を
一時間では読めません。
読んだって意味はありません、
と思います。
この頃の風潮は、
そういうことをちょっと錯覚してるようです。
させられているのかな?

 名物と詠わる男鹿のブリコかな

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秋

 

 打ち寄せしブリコの海の円さかな

ただいま朝の五時ですが、
外は真っ暗です。
室内気温は20度。
やっと秋らしい秋になりました。
Tシャツにトレーナーという格好も、
一週間前なら、
会社に着くと暑くて上を脱いでいましたが、
昨日はそんなこともなく、
汗をかくことなく、
快適に過ごすことができました。
昨日から読書週間です。
わたしの朝読は、
白井喬二の『富士に立つ影』が
そろそろ終りに近づいてきましたので、
これが終ったら、
またバルザックに戻るか、
それともマルカム・ラウリーの『火山の下』にするか、
菅江真澄の『遊覧記』にするか、
ユーゴーの『レ・ミゼラブル』にするか、
山本周五郎の『虚空遍歴』にするか、
それを考えるのもちょっとした楽しみです。
お。
夜が明けてきました。

 秋深し本を読みたき心地して

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四択

 

 神の魚北の潮を宿しけり

いきなりですが、
①中身がわかって、おもしろい本
②中身はわかるけれど、つまらない本
③中身はわからないけれど、おもしろい本
④中身がわからず、つまらない本
本について、
たとえば上のような分類が可能な気がします。
自分が買った本だとした場合、
④は最悪。なんでこんな本買ってしまったんだー!
②は、読み終わったら売るか捨てるか。
①は、しばらく本棚に置いておく。
気分がいいと再読し、悪いと売り払う。
③も再読の可能性が高く、
なかなか売ることも捨てることもできません。
中身がよくわからないのにおもしろいということは、
意味とちがうモノサシが働いているのでしょう。
最近のものだと、
『グーテンベルクからグーグルへ
――文学テキストのデジタル化と編集文献学』がそうでした。
脳細胞が刺激されているな、という感じ。

 華やぎて夜のしじまの薄かな

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ゴルコ3点

 

 酔っ払いふらり横断秋の風

さいとうたかをのマンガに
『ゴルゴ・サーティーン』があります。
麻生太郎元首相はこのマンガがたいそう好きで、
全巻持っているそうです。
それはともかく、
このごろアルバイトで来ているY田君は、
グレーのYシャツに細目のネクタイを締め、
ストライプの入ったスーツ姿で営業に出ています。
もみ上げが長い。
Y田君に、「ゴルゴ・サーティーンみたいだね」と言うと、
「そうですか。ありがとうございます」
「ゴルゴを意識しているの?」
「いえ。でも、鏡を見て、ちょっと思いました」
Y田君は、とても素直です。
少年のような初々しさがあり、
営業先の大学の先生たちからも可愛がられているようです。
なので、Y田君をゴルコと呼ぶことにしました。
ゴルコ3点。
いっぱい仕事を取ってきたら、
ゴルコ満点。
ダメなときはゴルコ減点。
全然ダメなときはゴルコ零点。
生き生きと楽しそうに仕事をしています。

 ふるさとは鮭の炙りし匂ひなり

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不審者!?

 

 秋の日や独り出社の時積もる

土、日と、読み進めたい原稿があり、
だれもいない会社で一人、
香を燻らし、机に向かっていました。
哲学の原稿なので、
速くは読み進められません。
三時、四時、五時が過ぎて、
間もなく六時になろうかというときに、
開けたままのドアにスーッと人影がしたかと思ったら、
そのまま静かに部屋に入ってきました。
頭になにかフードのようなものを被っています。
ん。誰!?
……………。
あの。O木です。持って帰りたいものがありまして…。
ああ。O木さん。
おそらく、わたしの目つきがよほどきつかったのでしょう。
不審者を見る目だったのでしょう。
それで、「あの。O木です。」
「あの。これ、片付けましょうか?」
「いや。明日片付ければいいよ」
「お疲れ様です。わたし、帰ります」
「はい。お疲れ様です」
さらに時はしんしんと降り積もっていくのでありました。
外に出たら、雨。
ああ、それでフード!

 電話なく客なく時の沁み入りぬ

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まだ暑い

 

 忙しく働きてふと秋となり

外へ出かけるときのこの頃の服装は、
上はTシャツにトレーナー、
下はジーンズが多くなりました。
やっとそういう季節になったかとホッとします。
ところが、
昼を過ぎた頃からだんだんと蒸し暑くなり、
昨日はTシャツ姿で仕事をしました。
隣の事務所のおばさんから、
「若いですね」と声を掛けられましたが、
若いのではなく暑いのです。
仕事帰り、
さすがにTシャツ姿ははばかられ、
トレーナーを着ましたが、
保土ヶ谷橋の交差点を過ぎ、
階段をえっちらおっちら上りきる頃には、
首と背中にうっすら汗をかいていました。

 薩摩芋食へば甘藷のおならあり

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