最後の語り

 

 柿の葉や風に揺られて離れけり

竹内敏晴さんの最後の本『レッスンする人』(藤原書店)
を読みました。
竹内さんは、昨年九月七日に亡くなりましたが、
死の直前の約三か月間に語り下ろされた内容を
まとめたものだそうです。
最後の最後まで、
薬を拒み、考えることを止めず、
集中して語る竹内さんの語りは、
常人のなすところではありません。
巻末にある愛娘・米沢唯さんの
「父と私」には泣かされました。
さすが竹内さんのお嬢さんだと思いました。
唯さんがおっしゃるように、
どこでどんな舞台に立っても、
(唯さんはダンサーです)
竹内さんは黒い帽子に黒いコート姿で、
頷きながら拍手しているにちがいありません。
生前、わたしは直接、
竹内さんから唯さんの写真を見せてもらったことがあります。
「親バカだね」とおっしゃって、
珍しく、はにかんでおられたのが印象に残っています。
亡くなる三日前、
奥様の米沢章子さんが
「人生で何が一番楽しかったの?」
と質問したのに、
竹内さんは「……あぁ。唯を育てたこと。」
と答えられました。
わたしも、
竹内さんがこの世からいなくなったとは思えないのです。

 空澄みて闇より白し冬の月

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10年後のわたしたちへ

 

 壁伝いに真っ逆さまの冬の蜘蛛

横浜女学院中学二年の生徒さんたちのよる
職場体験学習が終了しました。
「わたしの好きな本」をテーマに書いた
自分の原稿を持ち寄り、
それに基づいて一冊の本を作ります。
今回はフランス装という上製本。
帯には、「10年後のわたしたちへ」とあります。
「この手でつくった世界にたった一冊の本」とも。
電子書籍がブームだよと声高に叫ぶことがブームの今、
本とは何かをいっしょに考えた二日間でもありました。
永倉聖奈さん、石井菜緒さん、佐藤舞さん、
お疲れさまでした。

 セーターを出して落ち着く夕べかな

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本を作る

 

 今日からは完全防備のダウンかな

JR横浜線で横浜から八王子まではちょうど一時間かかります。
横浜発9時39分、八王子着10時39分。
いま用意している『先生、いのちのことを教えて』の著者
引地ユリ先生の講演を聞きに行ってきました。
八〇〇人入る会場が超満員!
いのちの誕生という重いテーマなのに、
軽妙な笑いを交えながらの楽しいお話で、
一時間半があっという間でした。
あふれんばかりの声量、メリハリの利いた話術、
とても八〇歳とは思えません。
『先生、いのちのことを教えて』は、
養護教員として三〇年間務められた引地先生の
九死に一生を得た引揚げ体験を綴るものです。
先生のユニークな性教育の根本が、
敗戦による引揚げ体験にあったことを知る本になる予定です。
冷たい雨をくぐって社に戻ると、
中学生たちが本作りに熱中していました。
初日とはちがい、
和気藹々とした雰囲気のなかで、
ときどき笑いもこぼれています。
つい、どんな本が出来つつあるのか、覗いてしまいます。
フランス装のかわいい本が出来上りました。
子どもたちの顔が嬉しさで上気しています。
指導してくれた多聞さん、テラチー君、
お疲れ様でした。

 寒いのに八王子まで一時間

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職場体験学習

 

 霜月や弱きこころに怒りあり

横浜女学院中学が毎年行っている
職場体験学習の時期がやってまいりました。
春風社での受け入れは今年で五回目になります。
二日間で、
「私の好きな本」をテーマに書いた自分の原稿をもとに、
小さな本を作ります。
出版社は本を作ることをなりわいにしていますから、
実際に本作りを体験してもらうことが一番だろうということで、
例年そうしています。
昨日はその初日。
午前中、わたしが講師をつとめ、
そもそも出版社とは何ぞや、
みたいな話をしました。
また、
漱石さんから「吾輩は猫である」の原稿を
今いただいたと仮定し、
平成のわたしならこんな風に直す、
的な話をしたり。
これが正しいという答えはなく、
第一の読者として著者の意図を汲みつつ、
分かりやすさ、
読みやすさを大事にしながらやらなければなりません、
てなことを、
一時間半たっぷり怒涛のごとく話しました。
さて今日はいよいよ本番。
講師は、矢萩多聞さんとテラチーです。

 オーティスの歌に和みし冬の月

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元気のもと

 

 APEC忘れ去られし冬の月

週に二回はドジョウを食べます。
子どもの頃秋田で食べたのは、
同じドジョウでも、
ほかになんにも入れない、
ただ醤油で濃く味付けしただけの煮たドジョウでしたが、
それでも美味しくてよく食べました。
夕方弟と罠を仕掛けに行き、
翌朝早くに取り上げに行くのです。
竹で編んだ罠を持ち上げた瞬間、
ドジョウがウニュウニュと動いて、
どれぐらい獲れたかが重さで分かりました。
家に持って帰り、罠の栓を抜き、
バケツにどさりと黒い塊となって落ちた
ドジョウを見たときの快感は忘れることができません。
イモリが紅い腹をひるがえし、のたくっています。
イモリを取り除き、
適当な量のドジョウを小鍋に入れて煮るのは、
母か祖母の役目です。
押さえた蓋にバチバチとドジョウがぶつかります。
押さえていないと、
どこまで跳ぶか分かりません。
それぐらい力がみなぎっている。
数年前、
怪我と病気で全く食欲が失せた時、
ただドジョウだけは食べたいと思って、
野毛坂をとぼとぼと下り、
福家さんに向かったものでした。
ドジョウは、だから、わたしの元気の源です。

 午前四時寒さしんしん降りにけり

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警官

 

 ひたひたと天への落ち葉つづきをり

昨日は日曜日でしたが、
いそいそと会社に出かけました。
紅葉坂の途中に横断歩道があります。
ここか。
ウチのテラチーが赤信号で渡って警官に注意されたのは。
ふと見ると、
いつもはいない警官が確かにいます。
APECで駆り出された警官に違いありません。
ふむ。
いたずら心がもたげてきました。
と。
信号がタイミング悪く(よく?)青に変りました。
しかたなく、普通に渡りました。

 豚汁や遥か上空荒れにけり

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三五〇点

 

 つやつやと四つに割れし柿の尻

弊社の創業は一九九九年一〇月一日ですから、
現在は十二期目にあたります。
先日、
総務のN田さんが十一期の在庫表を整備してくれ、
それにより数えてみたところ、
この十一年間で
約三五〇点の本を作ってきたことになります。
一冊一冊こころをこめ、
五〇〇点、一〇〇〇点目指し
頑張りますので、
これからも皆様どうぞよろしく。

 秋の日や父のふるさと待ち遠し

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