不審者!?

 

 秋の日や独り出社の時積もる

土、日と、読み進めたい原稿があり、
だれもいない会社で一人、
香を燻らし、机に向かっていました。
哲学の原稿なので、
速くは読み進められません。
三時、四時、五時が過ぎて、
間もなく六時になろうかというときに、
開けたままのドアにスーッと人影がしたかと思ったら、
そのまま静かに部屋に入ってきました。
頭になにかフードのようなものを被っています。
ん。誰!?
……………。
あの。O木です。持って帰りたいものがありまして…。
ああ。O木さん。
おそらく、わたしの目つきがよほどきつかったのでしょう。
不審者を見る目だったのでしょう。
それで、「あの。O木です。」
「あの。これ、片付けましょうか?」
「いや。明日片付ければいいよ」
「お疲れ様です。わたし、帰ります」
「はい。お疲れ様です」
さらに時はしんしんと降り積もっていくのでありました。
外に出たら、雨。
ああ、それでフード!

 電話なく客なく時の沁み入りぬ

201010231218