月刊漫画ガロ

 

・春笋の伸びる音する狐狸の宿

思うところあって、
ガロの歴史と変遷をつづった『ガロ曼陀羅』や
長井勝一『「ガロ」編集長――私の戦後マンガ出版史』
をもとめたのですが、
ぱらぱらめくっているうちに、
今度はガロそのものが欲しくなり、
古書でそんなに高くなくでていたので数冊購入。
また、
あがた森魚の歌で有名になった
林静一の『赤色エレジー』も古書で。
大判の雑誌を手のひらにのせ、
ページをめくっていくと、
文字ばっかりの本よりも余計に、
封じ込められた時代の空気がもやもやと、
またはらはらと
立ち上ってくる気がいたします。
たしか中野坂下交差点のビルの地下
にあったスペースで行った
「はだしの青春」(宮本研)まで、
ひりひり思い出されます。

・口中に季の香ひろがる乾燥果  野衾

えびすと?

 

・曇天に紅梅の紅色を添ふ

三月に入りました。
新しい仕事が決まり、
その打ち合わせのために
人類学ご専門の著者と、
紹介してくださった先生が来社される日の
事前の打ち合わせをしていたときのこと。
ふたたび登場のイシバシ、
この度は小声にて、
おもむろに、
「レビ…? エビ…?」
と言いますから、
「なんのこと?」とわたし。
「ほら、よく男の編集者の話に出てくる…。
いまも出てきたでしょ」
「ん!?」
「えびすと…」
「えびすと?」
「えびすと…」
「あ!」
「なんですか!?」
「わかった!」
「なにが?」
「えびすとじゃなくてレヴィ=スト」
「ああやっぱり。えびすとなのかれびすとなのか迷って」
「レヴィ=ストロース」
「はい」

・紅梅や宿の眠りの頬を染む  野衾

驚くと

 

・予報士のけふの陽気を当てにする

根本敬のエッセイ集『電氣菩薩』がむちゃくちゃ面白く、
いまはコレ。
の続きのはなしになりますが、
彼の漫画とエッセイに登場する人物
の発する言葉には、
独特の言い回しがいくつかあり、
そのなかで、
わたしがもっとも気に入っているのが、
「えあ!?」。
驚いたり呆れたりする場面でつかうようなのですが、
ひとり割りと大きな声で試してみると、
顔まで「えあ!?」となり、
なんだかとっても変!
「えあ!?」
になる。
「えっ」でも「なぬっ」でも「ゲッ」でも「ハッ」でもなく、
「えあ!?」。
どうぞ、皆さま、
ぜひ、織田、壊死ください、
いや、お試しください。

・美しきひとを濡らして小雨かな  野衾

根本敬の本

 

・ふるさとの山の笑ふを待ちてをり

漫画家・根本敬のエッセイ集『電氣菩薩』がむちゃくちゃ面白く、いまはコレ。『電氣菩薩』は『因果鉄道の旅』の続編ともいうべきもので、タイトルにあるとおり、因果者たちの織り成す『場』をていねいにつむいで行く。そのプロセスに飛躍がなく、いっしょに歩いていたら、とんでもない処に来てしまっていた、でもそこは、また来る過程で見た起きたもろもろは、世間相場とはちがっていても、そうでしかありえないほどの磁力をもって、そうなっていたのだとしか思えない。
パリ人肉事件が起きたとき、根本の言葉で言えば、「捏造された宇宙人写真における宇宙人の如き佇まいを見た瞬間、衝動的にパッと佐川という人に対して手が伸び、心臓の部分てえか中心をギュッと鷲掴みしてしまった。…「善」も「悪」も、「白」も「黒」も越えているってえか関係ない。…」と思ったものの、「どうしたら良いかは解るはずもなく、それから13年間ただ、ただギュッと握ったままにしているより術はなかった。」
ここのくだりが泣けてくる。だれに甘えることなく、アタマの権威に寄りかからず思考と思索が廻っている、13年間ただ、ただギュッと握ったまま。のちに唐十郎が『佐川君からの手紙』で芥川賞を受賞しても、本屋で本をパラパラめくる程度で、買ってまで読もうとしなかった。なのに、結婚を決めて東京を離れ横浜に住もうと移り住んだら、目と鼻の先にパリ人肉事件の佐川一政が住んでいた! まさに因果であり、ほしであり、『場』なのだ。とにかくこんな面白く、つぎつぎ色んなことを感じさせられ、思わされ、考えさせられる本は久しぶり。ページに漂っている空気感がたまらない。

・春風やかたき蕾のほころべり  野衾

ラジオ宅配便

 

・けるるんの春先取りの陽気かな

弊社の専務は石橋さんで、
この日記に専務イシバシの名でときどき登場する。
加齢臭をカレーの匂いと間違えたり、
全集を禅宗と勘違いしたり、
明恵上人を研究している学者に向かい、
「先生お会いになったのですか?」
と破壊的な質問を投げかけたりと、
わたしだけの笑いの壺に
しまっておくにはもったいなくもあり、
その都度都度に
ご披露してまいりました。
ちなみに、
破壊的な質問をされた宗教学ご専門の先生、
内心はともかく、
外見的には動じることなく
「いえ。明恵は鎌倉時代の人ですから…」
とお答えになった。
前置きが長くなりました。
数日前のこと、
イシバシと昼食をとっていたとき、
彼女の年来の趣味の一つ、
ラジオで聴いて印象に残ったはなしを
ひとくさり聞かされました。
はなしの最初から、
わたしは
ひとつの大きな間違いに気づいてはおりました。
しかし、
いかに長いつきあいとはいえ、
嬉嬉として語る彼女の姿を目の当たりにし、
途中ではなしの腰を折るのは
いかにも無粋と躊躇われた。
と、
そんな当方の思いを知ってか知らずか、
おそらく絶対知らないイシバシは
もうムチャクチャ間違ったまま、
はなしを推し進していきます。
はなしが一段落した頃合を見計らい、
もはやどうにも我慢できなくなったわたしは、
「ラジオ深夜便でしょ。ラジオ宅配便ておかしいでしょ」
イシバシ「あ! あはははは…」
あははははじゃねえし。
*
↓(写真)イシバシとわたしはこれを食べたーか?

・キヤスターの襟ピンクに変りけり  野衾

デューク・エリントン

 

・おちよぼ口消費増税近づけり

あのスティーヴィー・ワンダーが
「サー・デューク」という歌をつくるほどリスペクトする
デューク・エリントンですが、
これまで、
あまり熱心に聴いてきたわけではありません。
『マネー・ジャングル』は好きでよく聴いたし、
今もときどき聴いています。
だいたいビッグバンドというのが
若いときピンとこなかった。
デューク・エリントンもカウント・ベイシーも
ビッグバンドのレコードが多い。
多すぎる!
『マネー・ジャングル』はビッグバンドでない
ふつうのジャズです。
また、
好きなスペインの画家ジョアン・ミロと
野外を散歩するエリントンの映像が残されており、
野外に設置されたピアノを彼が弾く。
ミロがピアノに寄り添い、
肘をついてそれを聴いている。
ときどき、ふっと、空を見上げ。
その曲が素晴らしい!
エリントンもノッているのがよく分かる。
バーンと鍵盤をつよく弾くときは、
両脚が宙に浮き。
なんともかっこいいのだ。
が、
それはそれとして、
このごろ、
ビッグバンドのものもいいなぁ、
桑田さんが昔どこかで
ビッグバンドの曲を書いてみたい
てなことを言っていたなぁ、
というわけで、
ビッグバンド。
そういうところまできていたのですが、
ついこのあいだ、
映画『アメリカン・ハッスル』のなかで、
重要なアイテムとしてエリントンの
レコードがつかわれていて、
やられちまいました、
はい。
しかも可愛いエイミー・アダムスが
エリントン好きって言うんですからたまりません。
もちろん役の上での話ですが。
というわけで、
きのうはさっそく
会社のBGMとしてデューク・エリントン。
と、
Kさんやってきて、
さっきのはだれですか?
お!
はい。
デューク・エリントン。

・日数なく二月損する気分せり  野衾

ラッキー度

 

・街行けば春の流行闊歩せり

夜中、ふと眼が覚めた。
布団から左手を出し、
ゆっくり半身を起こすようにしながら
右肩横に置いてあるケータイ電話を手に取る。
23時32分。
23:32と表示されている。
トイレに起きる。
布団にもどり、
もう一度ケータイ電話を開く。
23:32。
え!?
え!?
びっくりしたぁ。
前に表示された数字が
一瞬再度表示され、
それから現在時刻が表示される。
なんだ。
そいうこと。
22:22と
どっちがラッキー度が高いだろう。
パチンコならゾロ目だが。
でも鏡像も悪くない。
もういちど寝る。

・今週の予定を記す二月かな  野衾