「本は物である」考

 

・語らへば暑さを忘る浜の宵

装丁家、イラスタレーターの桂川潤さんをお招きし、
「本は物である」考と題して、
講演、対談、懇親会を行いました。
講演は分かりやすく、
おもしろく、
深く納得する内容で、
本が偉大な発明品であることを再確認。
日々の仕事に、
清新の風を吹き込んでいただいた気がします。
対談は、
桂川さんがこれまで手がけてこられた
春風社の本について。
本づくりの要諦、「こころ」が
一冊一冊の本にどのように
盛られていくのかをお話しいただきました。
プロとアマそれぞれの良さ、
ちがいについても。
最後は、
室内ではありましたが、
暑気払いを兼ねてビアガーデン。
いろいろな職種の方がお越しくださっていましたから、
写真家橋本照嵩さんの
「出版社港町説」が証明された形。
みなさんにこやかに歓談されていたのが
何よりもうれしく。
本も会も砂時計よろしく、
結節点を過ぎ、
新たな関係が静かに展開していく風情。
それにしても、
桂川さんの話は面白い!
お人柄だなぁ。

・春風の港に集ふビアガーデン  野衾

怒涛のときが過ぎ

 

・首手腰しなふりよろし踊りかな

テレビに因幡晃(いなばあきら)がでていました。
秋田県大館市出身のシンガーソングライター。
因幡晃といえば
「わかって下さい」
「わかって下さい」といえば
因幡晃。
わたしもよく聴いたし
よく歌った。
いま歌わない。
な~んでだ?
恥ずかしいから。
あれ、青春の歌ですから。
いま思えば馬鹿みたいな話なれど、
「わかって下さい」を聴けば
痛かったし、
「わかって下さい」を歌えば
泣けた。
泣けた?
はい。
泣けて歌えませんでした。
だって青春真っ盛り!
十年前なら
痛みの名残りみたいなものがあった
気もしますが、
きのうテレビで最終フレーズまで聴いていても、
ちっとも痛くない、
ばかりか、
それよりも何よりも、
因幡晃の乱杭歯(らんぐいば)
が気になってしょうがない。
「わかって下さい」
というより、
「治して下さい」
昭和は遠くなりにけり。
ああ青春!

・太鼓打つ父赤銅に踊りかな  野衾

文鳥飛翔

 

・階をひらりティッシュや揚羽蝶

ひかりなちゃん家でながく飼ってきて、
家族も同様だった
白い文鳥が他界しました。
下の写真は、
ひかりちゃんが前日に撮ったもの。
空の青に白が映え、
威厳があって神々しく、
かがやくいのちがまっすぐ
天に向かっているかのようです。
写真に付されたタイトルは、
「私はここにいる」
亡くなる寸前、
文鳥は大きく羽ばたき、
ついにこと切れた。
わたしは何度か会っているだけですが、
ひとの言葉は話さなくても、
ひとの言葉をよく解し、
家族に感謝し
いのちを告げ知らせ、
わたして静かに逝きました。

・川流るむかし宿場の蚊喰鳥  野衾

写真のオーラ

 

・身を固め歩幅一尺台風過

横浜市民ギャラリーで開催されていた
みやこうせいさんの
「ルーマニア民俗写真展 もうひとつのヨーロッパ」
を見に行った際、
みやさんから直接聞いた話。
今回でなく、
東京で展覧会をした際、
目の見えない人が
三日連続で展覧会に来てくれたとのこと。
うかがえば、
みやさんの写真にオーラを感じると。
三日連続で見に来られ、
じっくりと見て
感じて、
帰りがけに写真集を買って帰られたのだそう。
見るは、
目によるだけでないことの証。

・台風過烏朝から鳴きにけり  野衾

むま

 

・雲を遣りでんと居座る残暑かな

馬は「うま」ですが、
昔は「むま」でした。
万葉集にもでてきますから、
1200年以上まえ。
ところが秋田では、
県全域ではないかもしれませんが、
今でも馬のことを「むま」といいます。
父も母も「うま」とは言いません。
「むま」
正確には「んま」
逆に、
むかしむかしも「むま」と書いて
発音としては「んま」
と言っていたのではないかという気もします。
腕を組んで「んー」と唸る声を
「むむ」
と表現するように。

・葬儀場ひっそり閑の残暑かな  野衾

ルーマニア民俗写真展

 

・雨降ってぬぐい切れずの残暑かな

写真家みやこうせいさんの
「ルーマニア民俗写真展 もうひとつのヨーロッパ」
を見に横浜市民ギャラリーへ。
伊勢山皇大神宮の裏手、
春風社からは
ゆっくり歩いて五分ほど。
ルーマニアの人びと、暮らし、伝統、風景をつたえる写真70点。
ほれぼれ見入りました。
160回ほど
ルーマニアを訪れているといいますから、
みやさん、
ルーマニアにすっかり魅せられてしまったのでしょう。
写真を通じてそれが分かる気がするし、
それを分からせてくれる写真です。
お近くの方、
いや、
遠くの方もぜひ訪ねて見てください。
すばらしい写真です。
21日(日)まで。
見終わって帰ろうとしていたら、
みやさん現れしばし歓談。
なんとも若い。
若すぎる!
ルーマニアから元気をもらっているのでしょう。
また近々行くのだとか。

・雨落とし雲切れ秋や降り来たる  野衾

汗どっと

 

・流れずにふくらんで行く夏の雲

お盆が過ぎるとさすがに秋めいてまいります。
朝はまだ暑くなく、
会社までのいつものコースも
気持ちよく。
清々しく。
青春!
てか。
桜木町駅川村屋の「遠藤の青汁」は、
まだやってません。
いいのいいの。
しばらくコンビニで野菜ジュース買うから。
地下道を歩き、
美術館、
にぎわい座、
能楽堂のポスターなんかを冷やかし、
それから前を見て
ゆっくり歩き、
やがて上りエスカレーターへ。
爽やかはつづいていました。
と。
光の量が増し
地上へあと一歩のところで、
饐えた汗の臭いが濁流のごとく押し寄せてきたから堪らない。
くっせー!!!!!
鼻曲がる。
くっせー!!!!!
てめー、
くっせー!!!!!
爽やかな朝だったのに、
くくくっせー!!!!!
どうしてくれるんだ。
にしても、
くっせーよ!!!!!
Tシャツぐらい洗濯しろよ。
自分で臭くないのか。
それで仕事に行くのかよ。
ったくよー。
爽やかな朝は
こうして終りを告げたのでした。

・蜩のゼンマイの巻き緩みけり  野衾