さまざまのこと 36

 

中学生になるにあたって、自転車を買ってもらいました。
天神というところに自転車屋があって、井川東小学校に通っていた子どもたちの多くは、
だいたいそこで自転車を求めたはずです。
そのころは、
井川東小学校と井川西小学校があって、
中学には、二つの小学校から生徒たちがあつまってきました。
事前に天神の自転車屋がカタログをもって、各家を訪問していました。
それまでは、
ベージュのフレームの子ども用自転車でしたから、
自転車屋のおじさんが示したカタログをひらくと、どの自転車をみても、
文字どおりキラキラかがやいて見えたものです。
フレームの色は青系と赤系が多かったかな。
青系が男子向け、赤系が女子向けということだったのかもしれません。
そのなかに、黒いフレームで、
しかもピカピカしていない、
写真で見ても、特殊なつや消しがほどこされているようであり、
少年のわたしにシブイ!と感じさせるにじゅうぶん。
さっそくそれを注文。
実物がとどくまでの時間のなんとながかったことか。
ついにあの自転車がじぶんのものに。
五段切り替えの変速ギア。
じぶんのものなのに、じぶんのものでないみたい。
メルセデスベンツよりもポルシェよりもランボルギーニよりもかっこよかったさ。
はじめて乗ったとき、
だれかに見られるのではないかと気になった。
なんだか恥ずかしいような。
顔が赤くなっていたかもしれません。

 

・稜線を宙になぞるや夏の山  野衾