イルカにのった少年

 

ブルククハルトの『ギリシア文化史』の人名注に
「アリオン」という人物が紹介されています。

 

アリオン 前七世紀頃。ディテュランボス詩人。レスボス島出身。
船中で船乗りに殺されかけたとき、乞うて一曲を歌ってから海中に身を投じたところ、
歌を好む海豚《いるか》が背に乗せて救った、という伝説がある。
(ヤーコプ・ブルクハルト[著]新井靖一[訳]『ギリシア文化史 第二巻』
筑摩書房、1992年、p.588)

 

むかし、城みちるの『イルカにのった少年』という歌があり、
ヒットしました。
大ヒットといっていいかもしれません。
上の文章を目にしたとき、
これがあの歌の元かと思い調べてみましたら、
直接的ではないにしても、どうやら、大元はこの伝説にあったようです。
ウィキペディアによると、
城みちるは、
芸能事務所社長宅に下宿していた時期があり、
『イルカにのった少年』で歌手デビューを果たしたわけですが、
曲名を決めたのは事務所の社長で、
当時観た映画の「沈没船船首のイルカに乗った少年の像」
から着想を得た、
とのこと。
さらに調べてみたところ、
映画の原題は、
そのものズバリ『BOY ON A DOLPHIN』(1957)
日本語タイトルは『島の女』
わたしはこの映画を観ていませんが、
舞台はエーゲ海に浮かぶイドラ島、
海女に扮するソフィア・ローレンが海底で発見した、
イルカに乗った少年の黄金像にまつわる冒険物語
だそうです。
と。
半世紀ほど前にヒットした歌に、
こんなエピソードがあったとは。
知りませんでした。

 

・夏帽子被れば祖父の夏帽子  野衾