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京浜東北線下り電車桜木町駅行き
反対側は大宮行き
ドアが開いてわたしはソファの端に
あとから隣に座ったのは
ウィーンの香
または
滝のとどろくパターソン
おもむろに横罫の入ったB5判用紙を取り出す
用紙には半分ほど書き込まれた文字
それから宙を見やり
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南行先行
電車がすべりだす
横文字の男は
つづくことばを思いついたのか
なにやら書き留めている

 

狂気は記憶の病
とディルタイの本にあった
ことばは詞
詩は記憶が司る
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桜木町 桜木町 終点です
大船方面へお越しの方は ホームの反対側でお待ちください
きょうの未来
絶対までの

 

・音立てて殻破り出づ催芽かな  野衾