体温を感じる戦

 

龐徳は足軽に命じて口汚くののしらせたが、
関平はまるでかまいつけず、
要所をしっかと押さえ、
また手分けして間道の防備にあたらせるとともに、
敵が悪態(あくたい)をついて戦いをいどんでいることを関羽の耳に入れぬよう、
諸将に言いつけた。
(小川環樹・金田純一郎訳『完訳三国志』五、p.302、
ワイド版岩波文庫、2011年)

 

決死の覚悟で戦にのぞむ龐徳(ほうとく)との決戦をえがく場面において、
関羽の養子・関平のこころくばりを記す箇所。
なんでありますが、
三国志を読んでいると、
残酷なシーンがてんこ盛り
であるにもかかわらず、
クスっと笑ってしまうシーンがたびたび出てきます。
それは、
引用した箇所にもみられるように、
口汚くののしったり悪態をついたりして、
むかいあう敵将が怒るように
わざと仕向けていること。
戦闘場面ではそうするのがあたかも礼儀ででもあるかのごとく。
たとえば、
感情のないロボットによって
無差別に人を殺すようなことは
時代がちがうとはいえ絶対にありません。
それと、
その土地その土地に住む庶民の暮らしを気づかうのも、
なるほどと合点がいきます。

 

・五月雨や泥鰌の泡の五つ六つ  野衾