忘れ物

 

気を付けても気を付けても、
よく忘れ物をする子どもでありました。
なんでもよく忘れました。
高校生のとき、
新しいズボンを買い、
裾上げしてもらったのを包装してもらい支払いを済ませての帰宅途中、
それを、
公衆電話の下の棚へ置き忘れたことがあります。
緊張して電話していたせいか、
ズボンのことをすっかり
忘れていたのでした。
ハッと気づいて戻ったときには、
空虚な棚が
冷え冷えとそこにあるだけでした。
以来、
ゆっくりゆっくり、
なんども確かめて行動するようになって、
あまり忘れなくなった気もしますが、
よほど身に沁みているのか、
夢ではいまでも
よく忘れ物をして落ち込みます。

 

・とぼとぼと傘を忘れて夏の月  野衾