五木ひろし

 

・後悔も先に立たずば夏の雨

わたしの夢には、
いろいろ芸能人も登場しますが、
今回は五木ひろしでした。
わがふるさと井川町の井内町内の外れ、
野外にセットされたテーブルを挟み、
ふたり酒を飲んでいた。
時代は現代なのに、
夢の中の舞台は峠の茶屋のようなたたずまい。
わたしと五木ひろしは、
そんなに親しい仲ではないけれど、
きのうきょう知り合ったという風でもなく、
それなりに近しい間柄のようで、
なのでわたしは、
「五木さんに取って置きのつまみをこしらえて進ぜましょう」
取り出したのは、
ビニールの袋に入った一味唐辛子と
かつおぶしの粉、
それとサラダ油の入った小瓶。
茶店の姐さんに小皿を二つ用意させ、
上記三つを皿にだし、
醤油を垂らしてよく混ぜる。
してそれを五木ひろしの目の前にすすめ、
「さあ、どうぞ」
おもむろに箸でつまんで口中へ運んだ五木ひろし、
「かっ、かっ、かっれええええ!!!」
と、
モノマネ芸人コロッケが真似する五木ひろし
そっくりの顔に変貌。
わたしはそれを見、
腹を抱えて笑い転げた。
わたしに笑われていることなど頓着なく、
ただただ辛かったのだろう、
五木ひろしは、
側に置いた鞄も打ち忘れ、
スーツにネクタイ姿のまま、
靴底から煙を立てて山のほうへ走っていった。

・飽き足らぬ烏声して夏の雨  野衾