橋本照嵩写真展「瞽女」

 

・雲白く青空の下桜かな

石巻出身の写真家・橋本照嵩さんが写真展を開きます。

「瞽女 Goze 橋本照嵩写真展」
2013/3/19(火)~3/30(土)12:00~19:00
Zen Foto Galleryにて。
106-0032 東京都港区六本木ピラミデビル208
23日(土)は、午後3時から北井一夫氏とのトークショー。
午後5時からオープニング・レセプション・パーティ。
どうぞ、ふるってご参加ください。

 

橋本さんは、一九七四年(昭和四九)に、
写真集「瞽女(ごぜ)」の出版により
日本写真協会新人賞を受賞しました。
木村伊兵衛が「臭ってくる」写真集だと絶賛した幻の写真集。
「瞽女」の新プリントによる写真展がほぼ四十年ぶりに開催されます。
全身写真家、人物の写真家、地を這う写真家、
いろいろ形容したくなります。
また、
震災との関連で思考を廻らせたくなりますが、
まずは、
瞽女さんたちの生のかたちを見てみたい。
写真集は持っていますが、
「新プリントによる」写真展といいますから、
別の体験になるかと楽しみです。

・がふがふと板戸を叩く春の風  野衾

マルコ

 

・日本地図花に覆はる大和かな

このごろ家人は、
ワイド版岩波文庫の
塚本虎二訳『新約聖書福音書』を読んでいます。
休日のきのう、
いつものように、
わたしは本棚横の椅子の上にあぐらをかき、
読みかけの本を読んでいました。
机の前の椅子に腰掛けしばらく『福音書』を読んでいた家人、
夜の七時を過ぎたころ、
「この椅子は長時間の読書には不向きだわ」と、
つと立ち上がり、
寝室に入っていきました。
彼女には本を読む場所が何箇所かあります。
八時を十分ほど過ぎ、
そろそろ読書に疲れてきたわたしは、
一昨年亡くなった児玉清さんの
『すべては今日から』(新潮社)を本棚の所定の位置へ戻し、
洗面所で歯を磨き、
それから居間の灯りを消して寝室へ入りました。
家人は両腕と頭を布団から出し、
『福音書』を読んでいます。
だいぶページがすすんだようです。
そこで、
「マルコ、もう終った?」と訊きました。
すると家人、
「なに言ってるの。もうとっくに終ったよ」と、
テレビのリモコンを取り上げスイッチを入れようとしました。
二秒もなかったと思いますが、
瞬時に二人ともマルコ違いに気づき大笑い。
へんなイントネーションの日本語で、
「あ~なたは、か~みを、しんじま~すか~?」
と言うちびまる子の姿が目に浮かびました。

・八十の父の田仕事始まれり  野衾

ビル・エヴァンス

 

・花万朶おいでよ山のふもとまで

ビル・エヴァンスをこのごろよく聴いています。
若いころは、むしろ避けていました。
トム・ウェイツを避けるように。
さびしがりのわたしには、
ビル・エヴァンスもトム・ウェイツも、
孤独の代表選手みたいに思えたからです。
しかし、
生きることの前提としての孤独が、
だんだんと身につまされ身に染みてくるにつれ、
トム・ウェイツも、
さらにビル・エヴァンスも、
親しみのあるなつかしい人に変りました。
大学時代からの友人で、
先日網膜剥離の手術をしたS君の部屋を、
学生時代に訪ねたとき、
S君の部屋にビル・エヴァンスの名盤
PORTRAIT IN JAZZ が置かれていて、
ああ、
S君はこんなのを聴くのかと思ったことを覚えています。
これからぼくが好んで聴くことがあるのかなあと、
その時は思いましたが、
めぐりめぐって、
やはりPORTRAIT IN JAZZは、
すごいわけでした。
わたしが前の会社に勤めていたころ、
夜中十二時を過ぎてタクシーに乗ったことがありました。
まあそのころは、
いつもそんなような生活でした。
小さい音でビル・エヴァンスが掛かっていました。
ビル・エヴァンスが好きなのですか?
というわたしの質問から話がひろがり、
音楽をやりたくて秋田から出てきたけれど、
あまりうまくゆかなくて、
今はタクシーの運転手。
ビル・エヴァンス。
いいですねぇ。
そうですか。
結局、
ビル・エヴァンスただ一人じゃないでしょうか。
そうですか。
亡くなる寸前までピアノを弾いていた。
クラシックでは、ディヌ・リパッティ。
ジャズでは、ビル・エヴァンス。
いまが極楽いまが地獄、
いまが死に際
いまが誕生ありがとさん。

・春なれど喫茶店無し鶴見小野  野衾

鈍重の気

 

・階(きざはし)を寺も社(やしろ)も桜かな

源氏物語の中に、
四十の賀、五十の賀というのがでてきます。
四十歳になったこと、
五十歳になったことのお祝いですが、
人生五十年という考え方からすれば、
さもありなん。
平均寿命が延び、
四十、五十は血気盛んの真っ只中
かも分かりませんが、
自身を点検すると、
あちこち故障してきていることが確認でき、
だけでなく、
行動も所作も思考も
鈍重になってきていることに気づかされます。
鈍重さをありがたいとも思います。
先日、スクランブル交差点を歩いていたときに、
目の前をビューと
馬鹿野郎自転車が駆け抜けていきました。
危なく接触するところでした。
ぶつかったら間違いなく、
吹っ飛ばされていたでしょう。
怒り心頭、
交差点の真ん中で立ち止まり、
小さくなっていく自転車を遠近法で睨みつけていたら、
あっという間に信号が変り、
クラクションを鳴らされました。
こういうときです。
歳をとったなぁと思い知らされるのは。
会社では、
若い人の気が充ちて気持ちがいい。
わたしはお香となって
鈍重の気をくゆらせます。
四月からは新卒の三名が加わります。
社員数は変りません。
いい仕事をしたいと思います。

・細道に迷ひ昭和へ抜けられます  野衾

詩の読み方

 

・がふがふと何を運ぶか春の風

小学生のころから詩を習います。
いまでも、おそらくそうでしょう。
わたしは、
詩というものがずっと分からないできました。
いまも、
分かっているのかと訊かれれば、
こころもとない気がします。
詩が分かるということは、
どういうことを指すのでしょうか。
分かるか分からないかはひとまず措いといて、
一方でずっと詩が気になってきました。
今だにそうです。
それで、
どんな風に読むかといえば、
気になる一篇の詩を
何遍か、
何十遍か、
繰り返し繰り返し読みます。
ゆっくり読みます。
黙読だけでなく、
声に出して読んだりもします。
そうすると、
ある種の詩の場合、
何遍か、
何十遍か、
読んでいるうちに、
なんらかのイメージがからだにやってきます。
思いもしなかったことばが湧いてきます。
これがなんとも面白い。
こういう詩の読み方は、
どこかにちゃんと書いてあるのかもしれませんが、
わたしはそれを本で知ったのではなく、
亡くなった竹内敏晴さんのレッスンに参加していたときに、
モノに触れてはじめてイメージは湧くと
竹内さんがおっしゃった
そのことを詩に応用し、
それを実地に行っているだけです。
したがって、
わたしにとって詩のことばは、モノです。
上で、
「ある種の詩」と書きましたが、
イメージがからだにやってくる詩は、
他の人はともかく、
わたしにとっては「いい詩」なのです。
そういう詩が一つ、
また一つ増えていくことも、
生きるよろこびだと思います。
昨日、
佐々木幹郎さんから詩のお原稿をいただきました。
何遍か読むうちに、
はっきりとイメージが湧いてきました。
泣きたいようでもあり、
うれしいようでもあり、
切なくなつかしい気持ちに襲われました。
今度の「春風目録新聞」に掲載します。
タイトルは「家族の肖像」
お楽しみにお待ちください。

・春の風いまが極楽ありがとさん  野衾

母川回帰

 

・朝四時の気温上昇春来る

きっかけは、
神奈川新聞の人気連載コラム「自転車記者が行く」。
それを一冊の本にして印税分を被災地へという企画を、
コラムの著者である佐藤記者と
新聞社に持ちかけたところ、
快諾をいただき、
2010年5月から2011年12月までのコラムをまとめ、
『突撃!よこはま村の100人 自転車記者が行く』を昨年出版しました。
コラムと本と被災地を結ぶアイディアは、
わたしが行きつけの床屋のご主人の一言でした。
「一人で仕事をしているので、
ボランティアに行きたくても行けないのよ」
「自転車記者が行く」では、
こつこつ地道に働く横浜の人が取り上げられています。
本が出来、
本の印税分と春風社としての義捐金を合わせ、
そのおカネを昨年
「石巻日日こども新聞」の子どもたちに届けてきました。
「石巻日日こども新聞」は、
震災から一年が経過した昨年の3月11日に創刊された季刊紙で、
被災地の現状を子どもたちが子ども目線で伝える新聞です。
届けたおカネは、
ちょうど一回発行するだけの印刷代に相当しました。
それで出来たのが「石巻日日こども新聞」第5号、
コチラです。
さらに、
これまでの「石巻日日こども新聞」の内容を佐藤記者がまとめ、
きのうの神奈川新聞に見開きで大きく紹介しています。
コチラです。(リンクは右ページのみ)
鮭は回遊した後、
母なる川に戻ってきますが、
同じように、
横浜で暮らす人びとの思いを伝える新聞が
被災地の人びとと縁を結び形を成し、
それがぐるりと戻って横浜の人びととの縁を結ぶ、
ということになったのではないでしょうか。
子どもたちが大人になるころ、
大人になった子どもたちが
復興の担い手になっているはずです。
「石巻日日こども新聞」を紹介してくれたのは、
石巻出身の写真家・橋本照嵩さん。
春風社のホームページで連載している写真コラム
石巻から」も合わせてご覧ください。
報道写真とはちがう石巻の姿を伝える写真たちを、
いずれ写真集にまとめ刊行する予定です。
今日も橋本さんは石巻で写真を撮っています。

・春なれば下駄を鳴らして歩きたし  野衾

元住吉の鍼灸院へ

 

・花粉飛び空が黄色くなりにけり

自宅を出て階段を下りていったら、
鉢植えのひなげしが咲き始めていました。
ひなげしと云えば、
アグネス・チャン。
♪ おっかのうえ ひなげしのはっなが~~
ところで、
きょうはピアノの音が聞こえません。
後ろから女の人が下りてきて、
写真を撮っているわたしの横を通り過ぎました。

元住吉着。
ブレーメン通り。
ドイツ・ブレーメン市の商店街ロイドパサージ
と友好提携したからと、
ウィキペディアに書いてあります。

一時間の針灸治療が終っての帰り。
階段横のひなげしがぱらーっ!と開いていました。
ひなげしと云えば、
アグネス・チャン。
♪ おっかのうえ ひなげしのはっなが~~

・黄砂かも空が黄色くなりにけり  野衾