マルコ

 

・日本地図花に覆はる大和かな

このごろ家人は、
ワイド版岩波文庫の
塚本虎二訳『新約聖書福音書』を読んでいます。
休日のきのう、
いつものように、
わたしは本棚横の椅子の上にあぐらをかき、
読みかけの本を読んでいました。
机の前の椅子に腰掛けしばらく『福音書』を読んでいた家人、
夜の七時を過ぎたころ、
「この椅子は長時間の読書には不向きだわ」と、
つと立ち上がり、
寝室に入っていきました。
彼女には本を読む場所が何箇所かあります。
八時を十分ほど過ぎ、
そろそろ読書に疲れてきたわたしは、
一昨年亡くなった児玉清さんの
『すべては今日から』(新潮社)を本棚の所定の位置へ戻し、
洗面所で歯を磨き、
それから居間の灯りを消して寝室へ入りました。
家人は両腕と頭を布団から出し、
『福音書』を読んでいます。
だいぶページがすすんだようです。
そこで、
「マルコ、もう終った?」と訊きました。
すると家人、
「なに言ってるの。もうとっくに終ったよ」と、
テレビのリモコンを取り上げスイッチを入れようとしました。
二秒もなかったと思いますが、
瞬時に二人ともマルコ違いに気づき大笑い。
へんなイントネーションの日本語で、
「あ~なたは、か~みを、しんじま~すか~?」
と言うちびまる子の姿が目に浮かびました。

・八十の父の田仕事始まれり  野衾