初体験

 

・ギックリ腰やって我が身の重さ知る

どうしても会わなければいけない人があり、
石橋にタクシーで我が家まで迎えに来てもらい、
保土ヶ谷駅から電車で東京駅まで。
大丸内の喫茶店で大事な面談を終え、
いざ鎌倉、
じゃなく、保土ヶ谷へ。
腰をいたわり、
グリーン車に乗ることにしました。
わたしは一度、
秋田からの帰りに東京駅で乗ろうとし、
ホームでグリーン車の切符を買おうとしたら、
SUICAのカードに登録されましたという表示が出るだけで、
切符が一向に出てこなかったことがありました。
(出てこないものだと知ったのは後のこと)
なんだこの機械、壊れてやがると文句を言うも、
相手は機械。
うんともすんとも言わない。
結局そのときは、
普通車に乗って保土ヶ谷に着いたのでした。
その後、
グリーン車の乗り方を
畏友白石くんに教えてもらいましたから、
ギックリ腰をやった今乗らなくてどうする
というわけで、
SUICAのカードに登録、
やはり切符は出てきませんでしたが、
それはそれでいいのだと知っていますから、
石橋と二人、
初の、初の、初の、
グリーン車に乗った!
乗りましたよ、ついに。
白石、乗ったぞー!!!
それでと。
SUICAをタッチパネルにタッチさせるんだったな。
お、これか。
たしかに目の前の座席シートに目印が。
「ほら、石橋さん。ここちタッチするみたいだぞ」
ふたり、そこにSUICAをあててバンバン叩きました。↓

ところが、うんともすんとも言わない。
なんだ、またかよ。
いい加減にしてくれよ。
「社長、ここじゃなく、上じゃありませんか?
これ、ただのシールですよ」
ん?
よく見れば、
たしかにただのシール。
反応するわけがない。
「座席上部の」と書いてあるではないか。
上を見たら、なんか、ある。あった。
今度はそこにカードを当てた。
そうしたら、ランプが赤から緑に変った。↓

落ち着いて、
目の前のシールの説明文を読んだら、
ランプのことにもちゃんと触れていました。
ふむ。
やれやれ。
車窓に目をやれば、
京浜地区の見慣れた光景が
いつもとちょっぴり違う気がしました。
ふ~。
腰の右側がちくりと。

・プルースト読了と記せり十二月  野衾

ギックリ腰

 

・ギックリと腰の花瓶の割れにけり

とうとうやっちまいました。
わたくし、
腰に爆弾を抱えていまして、
ついに爆発したというところでしょう。
高校の陸上部時代に
重いバーベルを持ってスクワットをやりすぎ、
腰を痛めました。
整形外科に行って診てもらったところ、
脊椎の何番目かの軟骨が少々つぶれていると。
以来、
膝を軟らかく使って、
腰になるべく負担をかけないようにしてきましたが、
ここ二カ月ほどなんとなくの違和感があり、
なんだろうなんだろうと、
不思議に思っていました。
ときどき、
背骨に針でも刺したような
チクッとした痛みが走り、
後から思えば、
あれが黄色信号だったようです。
先週金曜日の朝、
違和感を感じつつも、
家人に貼り薬を貼ってもらい、
立ち上がろうとした瞬間、
ベキッと破裂、
あとは一ミリも動けなくなりました。
鎖骨を折ったときに世話になった
仙台の瀬上先生に電話し、
状況を報告したところ、
ギックリ腰だろうと。
薬局で固定ベルトと痛み止めの薬を買ってきてもらい、
あとは安静がいちばんと教えられ、
おとなしくしていたら、
ずいぶん楽になりました。
振り返れば、
あのチクッと刺すような痛みだけでなく、
腰の辺りにいくつかの
違和感を感じていたことを思い出します。
ギックリ腰は、
けして突然になるわけではないようです。
にしても、
昨日、
三日ぶりに風呂に浸かって思ったのは、
積年の腰の疲れが劇的に吹っ飛び、
いったん初期化されたか、
ということ。
まだ、
だましだまししか歩けませんが、
そんなに悪くない感じ。
図に乗らず、
今度からは
違和感を感じたら無理しないように努めます。
ふ~。
あぁ痛かった。

・ギックリ腰ロダンのごとく固まれり  野衾

トンビに愛される?

 

・いなり寿司トンビに食はれ呆けたり

我が社のテラチーこと寺地くんは、
心根がやさしいせいか、
人は言うに及ばず、
虫や動物にも愛されるらしく、
電車内で蜂に愛され追いまくられた話は、
このホームページをご覧になっている方は、
ご存知かもしれません。
先日、
昼の休みによもやまのことを二人で話していた折、
山登りの話題になりました。
寺地くんがまだ子どものころ、
家族で大山に登ったこともあったそうです。
去年かおととしには、
北鎌倉の駅で電車を降り、
小津安二郎もファンだったというお店で
いなり寿司を購入し、
鎌倉山の散策とあいなりました。
しばらく歩いてしばし休憩。
楽しみにしていたいなり寿司の包みを開けた。
寺地くん、
いただくまえに
ちょっと写真をと思い立ち、
いなりを置いてカメラのファインダーを覗いた。
ら、
ブワッと何やら大きな黒い影。
一瞬のうちにいなりが襲われ攫われた。
寺地くん、しばし呆然。
見れば、
トンビが悠然と空に舞っている…。
「写真なんか撮ろうとするからよ」と奥さん。
寺地くん、返す言葉もなし。
奥さんからいなりを一個分けてもらったそうです。
ところで写真は。
不幸中の幸いで、
ちゃんとに写っていたのだとか。
トンビに愛された寺地くんのお話でした。

・古コートお直し済んで新たなり  野衾

二人の苦労人

 

・一年が終つた気になる忘年会

一昨日テレビを点けたら
「たけしの家庭の医学」をやっていました。
三時間のスペシャル番組とのことで、
日本人が抱える症状として二十四年間連続1位という
腰痛を取り上げていました。
わたしも、
高校陸上部のウエイトトレーニングで、
重いバーベルを持ちすぎ
何番目かの軟骨が少し飛び出てからというもの、
ときどき古傷が痛み、
腰をいたわりながら生活していますので、
他人事でなく番組を見ました。
パピーポジションという
幼児が這い這いするときの格好が
腰にとってもいいとのことで、
ゲストとして、
梅沢富美男が登場しました。
梅沢さんは、
仕事柄いつも重いものを身につけるらしく、
女形の衣装はなんと重さ二十キロを超えるそうです。
腰が痛くて、
自分で靴下を穿けず、
椅子に座った状態で奥さんに穿かせてもらうのだとか。
さて、
その梅沢さんがスタジオに登場したときのこと、
二週間、前もってつづけてきた梅沢さんに
実際にパピーポジションをやってもらいましょう
ということになった。
そのとき梅沢さんは、
自分の着ていたジャケットを脱いで椅子に置こうとした。
たけしがススッと近づき、ジャケットを預かろうと。
梅沢さん、それをあくまで拒否する姿勢。
たけしの気遣い。
梅沢さんの、たけしにそんなことはさせられないという配慮。
ほんの短い時間の、言葉によらない、
おそらく即興の動きだったと思いますが、
番組の主旨とは関係ありませんけれど、
見ていてとても気持ちよかった。
二人の苦労人の、
苦労によって練られた行動かと思いました。

・小料理と千成鍋の忘年会  野衾

選挙カー

 

・耳包む毛糸の帽子手放せぬ

「○○○○、○○○○です。
厳しい戦いを強いられています。お力を貸してください」
こういうことを叫び選挙カーが走っていきます。
どいつもこいつも毎度のことで、
聴きもしませんが、
根をつめて一日のゲラ読みを終え、
よっこらしょと立ち上がり
ブラインドを下ろしているときに、
ちょうど下を駆け抜けていきましたから、
いつになく腹が立ちました。
なんでおめーに力を貸さなきゃならねーのさ。
おめーに力を貸す義理なんかねーよ。
「○○○○、○○○○です。
厳しい戦いを強いられています。お力を貸してください」
この言葉のどこに、
今の政治を憂い
市民に仕えようとする深い悲しみや
真摯な志があるでしょうか。
かけらもない。
あるのは私利私欲だけ。
このごろパソコンを開き、
インターネットにつなぐと、
きたない政治屋どもの面が勝手に現れ、
削除することすらできない。
うるさいったらありゃしない。
ふだんあきらめているのに、
疲れているときは、
無性に腹が立つ。
せめて人の邪魔するな!

・かさこそと秘密めかして枯葉かな  野衾

その男 2

 

・マスクして帽子被れば強盗似

きのうは寒かったあ。
東北・北陸では大雪注意報が出たようです。
ここ横浜でも、
身を切られるような寒さでした。
いつものハンチング帽では間に合わず、
毛糸の帽子とマスクで顔を覆い、
防寒具で完全武装し、
いざ戦いに、
いや、
会社に向かいました。
桜木町駅で遠藤の青汁を買い、
水筒に入れてもらい、
エスカレーターで地下へ。
しばらく地下道を歩き、上りエスカレーターへ。
すると、
目の前に筋肉質のナマ足!
しかも片足を膝のところで曲げ、
ちょうど数字の4の形。
ん?
んんんんん???
顔を上げ、
見れば、
スキンヘッドに半袖半ズボン。
もう見ているだけで死にそう。
九十八歳で亡くなった祖父が若いころ、
一升の酒を賭け
川に張った氷を割り寒中水泳を敢行したという
エピソードを思い出しました。
エスカレーターを降り、
両足で大地を踏みしめ踏みしめ
歩いていったところから判断すると、
あのひとり四の字がためは、
修行の一環だったのかもしれません。
いやぁ、
それにしても驚いた。
ヒートテック愛用者の
うちのテラチーなら死んじゃうよ。

・十二月音を立てて過ぎにけり  野衾

その男

 

・中天に凄艶なりし冬の月

出社時、
たまに遇う男の人がいます。
わたしは坂を上っていますので、
その男の足もとが顔よりも先に眼に入ります。
そして足もとを見るだけで、
その男とまず間違いなく判ります。
なぜなら、
ズボンの裾が寸足らずだから。
足のくるぶしあたりまでしかない。
靴下がもろ見え。
顔を上げて確かめると、
確かめるまでもないのですが、
眉毛がつながりそうに濃い、
髭剃りあとの頬が青々としており、
ちょっと熊五郎みたい、
やはりその男なのです。
ところが。
先日。
坂を上っていたときのこと。
何やら見覚えのある足が歩いてきます。
もしや、
と思い顔を上げると、
つながりそうな濃い眉、
青々した頬、
間違いありません。
その男でした。
でも、
ズボンの裾が短くなく、
むしろほんの少しですが長めです。
ハッと気づきました。
その男、
ひょっとして、
春夏秋冬、四季折々とまではいかなくとも、
暑さ寒さに合わせて
ズボンの丈を変えている、
というか、
夏用のズボンは丈が短く、
冬用のは丈が長いのではなかろうか。
いや、
ぜったいそうにちげーねー!!
ふむ。
ファッションよりも機能性。
その男、
歩くときに、
少し弾みがついており、
半ズボンを穿いた子が
うきうき歩く姿を彷彿とさせます。

・地下鉄に駆け込み眼鏡かき曇り  野衾