龍のいた場所

 

 黒雲を裂きて火を吹く龍となる

大嶋拓氏の『龍の星霜 異端の劇作家 青江舜二郎』が、
五月十五日付秋田魁新報「秋田ゆかりの本」
のコーナーで紹介されました。
書いてくださったのは、文化部長の小川浩義氏です。
ドラマティックな人生と、
客観性を旨とする筆致のせめぎあいから、
青江の人物像が魅力的に浮上してくることを
的確に分かりやすく伝えてくださいました。
ありがとうございます。
大嶋氏はご自身のブログに本書を取り上げ、
「「個人の行動は純粋にその人間の自由意志に基づく」
なんていうのは大いなる幻想で、
実際はその時代その時代の波をモロにかぶって、
その中でもがきながら、どうにか、
最良と思われる選択をしているに過ぎないということが、
彼の人生を追ってみるとよくわかります。」とお書きになっています。
その通りだとわたしも思います。
そして、そのことがこの本に静謐な哀しさと、
この世は生きるに値する意味を添えることになったのだと感じます。
イギリスの理論物理学者ホーキング博士に言わせると、
宇宙の誕生に神は必要なく、天国もないことになりますが、
一人ひとりの人生は、
理論の網の目にかからない精妙な導きによって生かされていると、
考えないわけにはいきません。
本書はそのことを静かに感動的に語りかけています。

 春の雨植ゑし苗を育てよ育てよ